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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
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になる。体のバランスを完全に戻し切れていなかったディアベルが、他のC隊のメンバーとともにボスの攻撃をくらったのだ。
重範囲攻撃、ソードスキル≪旋車≫。まともにそれを受けたディアベルの体が浮き、そして――――。
時間が止まる。
俺のすぐ近くで響いた鈍い音が、この場が瓦解したことを冷酷に告げた。
――――――――*――――――――
朝、自身の長い黒髪を一つに結わえ、昨夜約束した通りに迷宮区の出入り口前まで来た。石造りの壁に背を預けながら空を見上げていると、ほどなくして40人程の集団が歩いてくるのが見えた。考えるまでも無い。フロアボス攻略戦に参加するプレイヤーたちである。
幸いあのトンガリ頭は自身のパーティーメンバーと話しているようで、こちらに気付いている様子は無い。あの少年の姿にいたっては、ここからは見えなかった。ひとまず安堵の息を洩らし、先頭を歩く青髪の青年に軽く会釈しながらあの屈強な色黒の男の姿を探す。すると、先に私の姿を認めたエギルがひょこっと顔を出し、私へ向けて手を振った。
「よう、キカ」
「みなさん、おはようございます」
「おはよう」
微笑みを作りながらありきたりな挨拶を交わし、すっと列の中に混じる。
「……なあ、キカ。昨日あんなことがあったんだから、無理しなくても良いと思うぞ」
「何度も言わせないでちょうだい。……どうってことないわ」
「……………そうか、すまない」
「いいえ、平気」
そう、大丈夫。だいじょうぶ。
――――キカちゃん。
駆け巡る朗らかな笑顔と柔らかい声を、手のひらに爪を立て払拭する。きっと、身体を動かしていたほうが、余計なことを考えなくて済むはずだ。
前へ進まなければ。歩みを止めてはいけない。振り返ってはいけない。耳も目も閉ざして遮断するのだ。無駄なことへ思考を割かないように。気持ちが揺るがないように。
――――好きだったよ。
……大丈夫、忘れない。絶対に、忘れないから。あなたの思いを、無かったものにすることはしない。
あなたを、背負うから。最期の一瞬まで。
「……キカ……」
気遣うような声音で名前を呼ばれるが、聞こえていないふりをして無視した。私のことを心配してくれているのは何となく察しているが、どうも居心地が悪い。私のことなんて、気にしなくていいのに。
彼らはボス戦のための一時的なパーティーメンバーだ。これが終われば、私は抜けることになるだろう。フレンド登録もしていないし、きっと別れればそれきり。もちろん街中でバッタリ会ったりするだろうし、また共闘する機会が無いとは言い切れないが、エギルたちとの関係はそこまでだ。所詮他人。仲間とは言い難い、他人。だから彼らに、私のことを気にする道理はないのだ。変に深入りしてほしくない。たとえ彼ら
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