暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第9話 黒染めの化け物(前編)
[1/12]
[8]
前話
前書き
[1]
次
最後
[2]
次話
つややかな黒髪が、さらさらと風に揺れる。少年は息を上げながらも走り、その背中を追っていた。
「おい待てよ、モミ!」
「えへへ、やだよー!」
ちらりと少年を振り返った少女はあっかんべーといたずらっぽく笑い、パッとまた走り出す。追いつくようで追いつかない微妙な速さで、距離が開いては縮まる。その繰り返しだ。
しかし、何回かそれをしたあと、疲れたのか、飽きたのか、ぴたりと足を止め、振り返った。その瞳は、不安そうに揺らいでいる。
「スグたちと、離れちゃったね」
少年の腕に、少女の手が回った。ぎゅっとしたその締め付けは痛いくらいで、少女の不安をそのまま表しているようだ。少年はなんとか明るくするべく、口を開いた。
「そ……、そうだ! 今日の劇、すごかったよな!」
すると、少女はぷくりと口を膨らませながら、
「劇じゃなくて、歌劇!」
「同じようなもんだろ?」
「違うもん! 歌劇は、歌って、躍って、お芝居もするの!」
ぱっと腕を離した少女は、その場でくるりと回った。少し回転をしただけなのに、その動きはなめらかで、可憐だった。
「モミは、お芝居も出来るんだからすごいよなぁ……。今日だって勉強のつもりで母さんたちにお願いしたんだろ?」
「うん、そうだけど……。やっぱりバレエが一番好きだよ!」
にっこりと笑い、そしてまたくるくると回った。
くるくる。くるくる。
長い髪も、少女と一緒にくるくると回る。
「あ、じゃあ、兄さん! クイズ出してあげる!」
「クイズ?」
「そう! ……なんで私がバレエをやっているのでしょーか?」
「なんでって……、さっきモミが自分で言ってただろ」
「そうだけど、……うーん、じゃあ考えておいて! いつか、教えてあげる――――……」
私が、バレエを続けている理由を。
<i708|14692>
――――――――*――――――――
俺――――キリトの目の前には、天井までつく巨大な扉が構えている。その威圧感は凄まじく、自然と体は強張っていった。だが、俺たちを含めた約四十名を包む微妙な緊張感は、そのためだけではない。これから行われる第一層ボス攻略戦――――、しかもほとんどの人間が初めての経験だ。……まぁ、これは何十回とやっても慣れることはないだろう。
しかし、現段階で、俺はこの中でもっとも集中できていないと断言出来る。しかしそれは、ベータテスターだったという事実から来る余裕ではない。
……夢を、見たから。
あちらに残してきた二人の“妹”の内の一人、紅葉と俺が話している幼い日。
ありきたりだけれども、俺にはもう出来ないだろうその会話。まだ俺も、紅葉も何も知らなかった、ただただ純白で彩られていた頃のことのはずだ。
紅葉と最後に交
[8]
前話
前書き
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ