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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第8話 六花が贈るメッセージ(後編)
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 熱く流れる血液の如く光る、紅のエフェクトが、宙を舞っている。
「僕が守るって、言ったでしょ?」
 照れたように笑う彼の顔を見て、私は事態を悟った。急速に、体を冷気が支配していく。そして、視線が“それ”を捕えたとき、自分のものとは思えない程震えた声が衝いて出た。
「……な、んで」
「…………ごめんね」
 ソレが、ぐんぐんと減っていく。先ほど腕の中で消えた少女のように、止まることなく。
「や……、やだ、とまって、とまりなさいよ!!」
 嘘だ。
 なんで、なんでこうなるの。こんなのあって良いはずがない!
「約束、守れそうにないや」
 ――――死んだら許さない。
 ――――死なないよ。
 具現化した命の残量は、赤く変わっていた。
「だめ、ネージュ……っ!!」
 いかないで。
 震え切っていた手を伸ばし、彼の首へ回す。しかしそれは、他ならぬネージュによって下ろされた。
 ふっと笑った彼の瞳が、優しげに私を見下ろす。
「あのね、僕ずっと言いたかったことがあるんだよ?」
 やめてよ。そんな満足そうに笑わないで。
 そんな私の願いを死神は嘲笑いながら、鎌を振り下ろした。

――――その数字は、非情なまでに、ゼロを刻む。

 ネージュのあたたかい手が、私の頬へ伸ばされる。まるで宝物に触れるかのような手つきで包み込まれた。
「キカちゃん、好きだったよ」
 だから、どうか笑って。
 変わらずにふわりと微笑む彼の唇が、そう動いたような気がした。
「ネ……!」
 私は必死に、彼の手へ自身の手も重ねようとして――――。

 するりと、空を掻いた。

 何も触れることはなく、ただただ青い欠片が指先を掠めていく。指の間から、青い雪が逃げていく。
「……あれ?」
 なんで、どうして触れられないの? 今の今まで、確かに目の前に居たのに。
「…………か、隠れているの?」
 ふらりと立ち上がり、辺りを見渡した。けれど獰猛な瞳が爛々と輝きながら私を射抜くだけだった。頬を青白い欠片が撫でていく。
「や……やめてよ」
 儚く散っていく。
 尊いものが、形を変え、あっさり消えていく。溶けるように、簡単に無くなる。まるで、雪のように。
 水の上に落ちてしまった、白い妖精のように。
 ただひとつ違うとすれば、高く、高く昇って行ってしまうことだろうか。
 高く、高く。どこまでも。
 私の手の届かないところへ、消えてしまう。高く、ひらりと、存在がかすれて、私は失う。
「こんな……、こんなことしていないで、早く出てきなさいよ!」
 ああ、昇っていく。
 消えてしまう。
「冗談、キツいわよ……。ねえ、聞こえているのでしょう!?」
 いかないで。
 いかないで。
 ……いかないで。
「ネージュ……、どこにいるの」

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