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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第8話 六花が贈るメッセージ(後編)
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った。
 格好悪いはずの笑顔を見るのが楽しかった。
 すんなり私に馴染んで、妙にきらきら輝いていて、――――格好良かった。それは、最期の笑顔も同様に。
 ……だから、私はあの瞬間を忘れない。エギルやルーク達には忘れてほしい、と言ったが、私は決して忘れない。
 私は、一生背負おう。
 彼の笑顔を、優しいテノールの声を、夕日のように輝く髪を、空の色を映す海よりも澄んだ瞳を。“ネージュ”という名前の通りに、真っ白だった彼を。私には眩しすぎて、直視出来なかった彼を。
 私は絶対に忘れない。忘れては、いけないのだ。ずっとそれらに縛られ続けなければいけないのだ。それが、彼へのせめてもの償いになるのなら。
 彼と見上げた空を振り仰ぐ。あの日々に見た夜空を思い描いた。
 きっと黒い世界に大切なものをばらまけば、あんな風に輝くのだろう。彼のように強く、眩しく輝くのだろう。……私の星は、くすんでしまって、肉眼ではとても見られないと思うけれど。
「……強くなりたい。誰かを守ることが出来るくらいに。もう、私の目の前で誰も死なないように」

――――強くなりたい。



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 私はウィンドウを操作し、両手用直剣――――、誰にでも手に入れることが出来るものだけれど、彼が私を守ってくれた、これだけは世界にたったひとつの聖剣であるそれを手に取った。
 目を閉じて、そっと、別れを告げる口づけを落とす。そのまま、静かに地面へ突き立てた。赤い花びらが舞う。
 そのそばに、先ほど買った“それ” ――――、スイートピーの花束を添える。
 あなたに貰った花。今まで手渡された花束の中で、一番嬉しかった花。
 花言葉を知っているかと問われて“ほのかな喜び”と答えれば、本当に嬉しそうに笑っていた。もしかしたら、あの時にはすでに私のことを……。
「ねえ、ネージュ。スイートピーには他にも花言葉があること、知っていたかしら?」
 ひとつは、“優しい思い出”。
 苦しみしかなかったはずの後ろの道に、僅かでも光を落としてくれた彼へのお礼。
「私、あなたと一緒に居られて本当に楽しかったわ。……嘘じゃない、本当よ」
 ひとつは、“別離”
 別れがあんなに急になるだなんて考えもしていなかった。つい数時間前までは、いつものように会話をしていたのに。
「……こんなことになるなんて、私は思ってもいなかったわ」
 ――――キカちゃん、好きだったよ。
「私も、あなたのこと嫌いじゃなかったわ」
 きっと、あなたとは違う意味の想いだったと思うけれど。私には、そういうことを上手く理解することは出来ないけれど。
 ――――いや実際はそうではない。よく分からないのだ。分からないのに、あなたは待ってくれなかった。私が答えを見つける前に、消えてしまった
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