蛍の光と闇と
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ど!不吉なんだけど!」
成虫になってからは口の構造上、水しか飲めないとか聞いた事がある。1週間虫の死骸まみれとかイヤ過ぎだから。
「あ――!!誰よ踏んだ奴!!」
葵の叫び声だ。…あーあ、やっちゃたか。誰かが。
「わー、潰れてる〜。あっちこっちで潰れてるね〜」
言うなお前は。いちいち言うな。
「うっわ危なっ」
今度は薫か、何だ!?
「ゴキブリだ!!危ね、掴むとこだったわ」
「うっわ臭、手臭っ」
葵が指を嗅いで悶絶した。試しに自分の指を鼻先に持っていく…うわ臭っ!なにこれ!?
「あ〜、蛍ね、捕まる瞬間、臭い汁出すよ〜。時間が経つと超臭いよ〜」
「あ〜スゲェな、詳しいな!!」
でもそんな詳しいなら何でうちに持ってきた!そして何で放した!!
「も〜、どうしよう。もう触るのイヤなんだけど」
唯一真面目に捕獲していた葵が音を上げ始めた。
「じゃじゃ〜ん、最終兵器〜」
珠美が超いい笑顔で何か取り出してきた。小型の赤い筒…みたいだけど
「バルサン〜♪」
ちょ…おま…ちょっと!?
「それはダメじゃん!!も、もう少し頑張ってからにしよ?ね?」
「殺す気満々か!!そんな最終兵器よくアッサリ出してくるな!?」
「てか怖い!あんたホント怖い!!合コンとかでは塩ホッケ見て『お魚さんかわいそ〜』とか目ウルウルさせてるくせに!食えよ、調理された魚は!!」
珠美は…え〜だめなの〜めんどくさ〜いとか呟きながらバルサンを鞄に仕舞い込んだ。…この女に騙される男たちに幸いあれ。……や、騙された方が悪いか。災いあれ。
暫く黙々と作業を続けた。割と集まってきた辺りで、またもや葵の悲鳴が上がった。
「ぎゃ〜!!食ってる〜!!」
虫カゴの中で一匹、しきりに顎を動かしている奴がいた。こいつが、力尽きたらしい蛍の死骸を……!!
「誰よゴキブリ入れたの!!」
「チャバネと区別つかないからなぁ…」
薫、お前だろ…こういう大雑把なことするの……。
「どうせ薫でしょ、出しなさいよ!!」
「待って!?部屋にゴキブリ放さないで!?」
「も〜バルサンでよくない〜?」
「だからやめろって!!」
…ともあれ、すっかり日も高くなり、ほうほうの体で大多数の蛍を集めた。
「…マック行くか」
「そだね。モーニングやってるかな」
「無理っしょ。私モスのがいい」
手をしっかり洗い、もそもそ着替えながら誰かが呟いた。
「―――うちらもう、卒業式の『蛍の光』で泣けないの決定だよね」
「あーね、蛍って言葉聞くたびにこの状況思い出すよ、絶対」
「蛍の闇は深いね〜」
「誰がうまいこと言えと」
マックに行く前に、蛍とゴキブリはその辺の空き地に離した。ゴキブリはともかく蛍はちょっとしたニュースになるかもしれない
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