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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十四話 謀略戦(その2)
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ュコック、ウランフ、ボロディン、ヤンを憎悪しているだろう。

ヤン・ウェンリーは間違った。ドーソンを無理にでも連れて行くべきだった。そうすればイゼルローン要塞攻略は宇宙艦隊の功績となったのだ。だが彼を連れて行かなかったため、宇宙艦隊司令部は面目を潰されたと感じているはずだ。

そしてドーソンは恐れている。自分が宇宙艦隊司令長官の座を追われるのではないかと。地位を守るためには帝国領に出兵し勝利を収めるしかない。そう思うはずだ。それは宇宙艦隊司令部の幕僚達も同様だろう。

同盟による帝国領出兵は避けられない。同盟市民、政治家、軍、その全てが出兵を望むのだ。間違いなく攻め込むだろう。つまり同盟の崩壊は避けられない。今後の政戦両略にはそれを頭に入れておく必要がある。

後はシュタインホフの情報部がどれだけ上手く彼らを煽れるかだろう。フェザーンの自由独立商人を使うからフェザーン回廊からハイネセンに向かって噂は流れるだろう。

フェザーン、ルビンスキーも焦っているだろう。同盟の三個艦隊の増援は予想外だったはずだ。ヤンに気を取られ見落としたのだろうが、今となっては言い訳は出来ない。イゼルローン要塞だけではない、三万五千隻、三百万の兵が失われたのだ。

これまでフェザーンが自由に動けたのは曲りなりにも中立を守ったからだ。だがその中立は失われた。そして帝国はイゼルローン回廊を何時でも塞ぐ事が出来る。ルビンスキーは理解するだろう。今後はフェザーン回廊が宇宙の火薬庫になることを。

帝国が今すぐフェザーンに攻め込むことは不可能だ。フェザーンの影響力は帝国の門閥貴族の間に浸透している。惑星開発、経済協力などでつながりは深いのだ。それでもルビンスキーにとっては帝国の動きは不気味だろう。

フェザーンは同盟と帝国の間で難しい舵取りを選択させられる。軍事力の無さがそれを更に厳しいものにするだろう。ルビンスキーに出来るのは、帝国の眼をフェザーンから同盟に逸らす事しかない。つまり帝国領出兵だ。

帝国領出兵を機に同盟軍に致命的な打撃を与える。その後は門閥貴族との内乱になる。そこで門閥貴族を潰せばフェザーンには後が無い。ルビンスキーには原作のようなつまらない小細工はさせない。問題は地球教だ、こいつの扱いをどうするかだな。

そろそろ内乱に備えてオイゲン・リヒター、カール・ブラッケ達をこちらに取り込む必要がある。名目がいるな。同盟領征服後の統治方法を研究させる、そんな所でリヒテンラーデ侯を説得するか。

そろそろ執務室に戻ろう。ヴァレリーが不審に思うに違いない。ココアを飲みながら書類の決裁をするか……。いや、もう少し此処にいよう、なんとなく今日は仕事をしたくない気分だ……。




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