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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十四話 謀略戦(その2)
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」
エーリッヒは頷くと悪戯を思いついたような表情で続けて話してきた。
「卿の役割は、門閥貴族ブラウンシュバイク公の部下で私やローエングラム伯に反感を持つ士官、そんな所だ。私やローエングラム伯の悪口を好きなだけ言って欲しい」
そう言うとエーリッヒは悪口の内容を話し始めた。
・新司令長官はミュッケンベルガーに取り入って出世した小僧、虚弱で前線に出られない、艦隊指揮の経験も無い、周囲の艦隊司令官もあきれて馬鹿にしている
・副司令長官は姉のおかげで司令長官になったが、イゼルローンで大敗を喫した、本来なら死罪でも可笑しくないが姉とヴァレンシュタインの口添えで副司令長官になった。ヴァレンシュタインが副司令長官にローエングラム伯を望んだのは自分より年下で扱い易いからだ、能力など欠片も無い阿呆だ……
・宇宙艦隊は無能な司令長官と副司令長官のせいでまとまりがつかず、滅茶苦茶になっている。ミュラー中将は司令長官と士官学校で同期だが陰で司令長官を小僧と呼んで馬鹿にしている。
・軍の衆望はメルカッツ大将に集まっているが、司令長官も副司令長官もメルカッツ大将を煙たがって会おうとしない。メルカッツ大将も不満を持っている。
・反乱軍が攻め込めば、神聖不可侵の帝国領土に攻め込まれた事で二人を罷免し、ブラウンシュバイク公が宇宙艦隊司令長官になる。実戦はメルカッツ大将に任せるだろう。
・ヴァレンシュタインとローエングラム伯はそれを恐れて要塞をイゼルローン回廊へ運ぼうとしている。
余りの酷さに俺もギュンターも笑い出してしまった。
「エーリッヒ・ヴァレンシュタインという人物は随分と酷い人間らしいな」
「全くだ、同姓同名で恥ずかしいよ」
ギュンターの皮肉にエーリッヒはすまして答えた。そのことでまた笑い出してしまう。
「卿の考えは判った。しかし問題が三つある。先ずブラウンシュバイク公の部下の俺がどうやってフェザーンに行くか? 第二に反乱軍に攻め込むだけの余力があるか? 第三にこれだけで反乱軍が本当に攻め込むか? 」
「ブラウンシュバイク公には正直に話して構わない。内乱の最中に反乱軍に攻め込まれるのは公にとっても不本意だろう。内乱が起きる前に反乱軍を再起不能なまでに叩いておく、それで納得するはずだ」
「……」
「それから反乱軍に攻め込む余力があるかだが、これも問題ない。反乱軍には各星系の警備隊や星間警備隊がある。これまでは帝国軍が攻めてくるために必要とされていたが、イゼルローン要塞が手に入った以上それほど必要ないはずだ。正規艦隊の再編に使えばいい。ざっと二個艦隊ほどは出来るだろう」
「……」
「それから、反乱軍に対する謀略はこれだけじゃない。他にも手を打つ事になっている。こちらはシュタインホフ元帥が協力してくれる。
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