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藤崎京之介怪異譚
外伝「鈍色のキャンパス」
〜epilogue〜
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もない。ただ…一人の男の想いが強すぎただけなんだ…。そう思うと、笹岡も被害者なんだと思う。
「鈴木さん、小林さん。そろそろ藤崎さんを休ませましょう。今は眠ることが大切ですから。」
「そうだな…。それじゃ、明日またくるからな。」
「それじゃな。」
 田邊君に言われ、鈴木と小林は田邊君と共に病室から出ていった。
「ゆっくり休んで下さい。」
 田邊君はそう言ってドアを閉めて行った。やはり小学生とは思えないほどだな…。
 田邊君…きっと言いたいことがあってここへ来てくれていたんだと思う。けど、何も言わない分、言葉より伝わってきた気がした。

 開かれた窓から、白いカーテンを揺らして暖かな風が舞い込んでくる。
 ふと見ると、枕元近くにある小さななテーブルに、手紙らしきものが置いてあることに気付いた。痛む躰で手を伸ばし、俺はそれを手に取った。
 それは白い封筒で、差出人を見て笑みを溢した。その差出人は、一年程前に知り合った相模英二という人物からのもので、俺は直ぐ様封を切った。
 彼は今、海外へ短期留学している。もうすぐ帰国するはずだが、どうやら今回の事件のことを鈴木から聞かされたらしい。文面は慌てて書いたことが窺え、それを見て再び笑みが溢れた。
「河内…何で俺は生きてんだろうな…。」
 この躰では、彼の葬儀に出席することも儘ならない。そんな俺を…彼は許してくれるだろうか?
 俺のせいで起きてしまったこんな事件に巻き込まれ、彼は…死んでしまった…。俺は…一生その代償を払い続けなくてはならないのだ…。

- 気にすんな。 -

 そよ風に乗って河内の声が聞こえてきたような気がし、不意に彼の笑顔が頭を過った。
「河内…お前が居なくなるなんて…。」
 俺は声を殺して泣いた。
 河内は…親友と言うより寧ろ、家族という存在に近かった。ずっと一緒だったんだ。音楽だけじゃなく、飯を食ったり旅行へいったり…時には喧嘩したりもしたが、直ぐに仲直り出来た…。
「河内…。」
 ただそよ風だけが、俺の嗚咽に答えてくれるように頬を撫でた。
 それが、何だか河内の心のような気がして…俺は流れる涙を拭うことなく、ただ、遠くへと続く青い空を眺めた…。



        end



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