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藤崎京之介怪異譚
外伝「鈍色のキャンパス」
VII.Fuga-Gigue-
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まるで寄せ木細工を思わせるものだ。その床を調べてみると、一ヶ所に真新しい傷があることに気付いた。大した傷じゃないから気付き難いが、それは紛れもなく、わざと床を剥がしたものだ。
 俺はその床を剥がした。案外簡単に外れ、そこから見覚えのある印が姿を現した。
「これは…何だい?」
 横から顔を出して国分教授が聞いた。この人…一体何を探してたんだ?
 それはよく見ると、先程の印と文字が違った。そこに書かれていたのは、マタイ伝第二十四章第七節と第八節。世の終わりの始まりを示すものだ。
「なぜ…この聖句を…。」
 解らない…。俺は理解に苦しんだ。彼は…本当は何を望んでいたのか…?
 俺はそんな思いを振り払い、その印に手を置いた。すると、それも他と同じように砂となってしまったのだった。
 横で見ていた国分教授は、何が起こったか分からないと言った風だったが、田邊君だけは突拍子もない声で叫んだ。
「藤崎さん!これは呪術です!そうか…そうすると中心にも印があるはずですよ!」
「まだあるって言うのかい!?」
「はい。恐らくはこの階か、またはこの階より上になると思います。」
 俺は考えた。中央棟ではほぼ中心が理事長室になっていて、その上が楽器庫になっている。その二つは頑丈な鍵が掛けられ、おいそれと入れない。とすれば、残るは一つしかない…。
「屋上か…!」
 俺がそう言うと、国分教授が首を捻って問った。
「君達…一体何を話してるんだ?呪術だのなんだの、私には理解出来んのだが…。」
「国分教授、話は後にして下さい。今は先ず屋上へ行かなくては。」
「しかし、あそこは鍵掛けてかるが…。」
 国分教授がそう言った時、不意に遠くから誰かの呼ぶ声がした。
 俺達が不思議に思って廊下へ出ると、そこへ宮下教授が来ていた。
「いゃ…老いぼれには堪えるわい…。」
「宮下教授、どうしてこちらへ?まだ中は危険ですから、直ぐに外へ…。」
 国分教授がそう言うと、宮下教授はあるものを俺達へと差し出した。
「君達にこれが必要だと思ってな。」
「それは…屋上の鍵ですか?なぜ屋上へ行くと…。」
 俺は不思議に思って言った。宮下教授には何も言っていないにも関わらず、俺達が練習室へいることも屋上へ行くことも知っているなんて…。
「思い出したんじゃ…。」
「…何をですか?」
 宮下教授はその問いに答えることなく、「それは後じゃ。早く行け。」と言って俺達を屋上へと向かわせた。
 俺は宮下教授の言葉が気になったものの、やはり残る一つの印が先だ。そう思い、俺達は屋上へと急いだのだった。
 屋上へ出ると、そこには何とはない風景が広がっていた。薄暗くなった空には星が瞬き始め、そよぐ風が俺達の間を吹き抜けてゆく。
「ここで…。」
 ここから見える風景は、彼…笹岡が最期に見
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