外伝「鈍色のキャンパス」
VII.Fuga-Gigue-
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「これは…何ですか?」
そこには不思議な模様が描かれていたのだ。
「私にはさっぱり分からない。亡くなった彼の下から出てきたんだが…。」
良く見ると、それは魔法陣の様なもので、円の周囲に何か書かれている。
「これ…ラテン語みたいですね…。」
「ラテン語?」
俺の言葉に、警官は怪訝な顔をして首を傾げた。
ラテン語は古語の一つで、現在ではミサ曲やレクイエム、マニフィカトといった宗教音楽位でしか一般には知られない。考古学や古文学などの学者などは知っていても、まず専門以外に学ぶ者はいないだろう。その知識をこの警官に求めるのは、かなり酷なことだと思う…。
「ラテン語はかなり古い言語で、現在の通用語とは違います。音楽家なら宗教音楽で扱うために習いますが、一般的ではないですね。僕は学びましたけど。」
「それで、これは何だと言うんだい?」
警官に問われ、俺はそれを受け取って読もうとした時だった。
「な…!?」
俺と警官は驚きのあまり体を硬直させた。
警官が渡したそれは、俺が触れた刹那、まるで砂の様に崩れて地面に零れ落ちてしまったのだ。
「ど…どうなってる…。私が持っていた時は何ともなかった筈だが…。」
「僕にも…解りません…。」
もうそれが何だったのか分かる由もないないが、この件に深く関わっていることだけは確かだ。
だが…これは一つだけじゃないような気がした。以前に何かで読んだ文献で、こんなものが出てきた気がする…。
「すみません。これ、同じようなものって、他にもありませんでしたか?」
気になって、俺は警官に聞いてみた。警官はハッと我に返って言った。
「いや…私は聞いていない。しかし、こんなものが関係あると言うのかい?私にはそうは思えないがねぇ…。確かに気味悪かったが…。」
警官は顔を顰めてそう言った。だが、その言葉が終わらぬうちに、再び何かが崩落する轟音が響いた。
「何だ!?」
俺と警官は音のする方を見ると、それは東棟の渡り廊下だった。
状況を把握するや、警官は直ぐに仲間の元へ走って行った。
「こんな…。」
取り残された俺は、その状況に唖然としたまま立ち尽くして呟いた。周囲にいた全員も同じ気持ちに違いない。
有り得ない非日常…それが目の前で繰り広げられている。
- お前の全てを壊してやるよ -
不意に笹岡の言葉が脳裏を過った…。
「まさか…全てって…。」
誰に言うでもなくそう言うと、背後からその言葉に対して問われた。
「それ、どういう意味ですか?」
驚いて振り返ると、そこにはいつの間にか田邊君が立っていた。
「田邊君…君はもう帰るんだ。ここはまだ危険だから。」
俺は問いに答える代わりに、彼に帰るよう言った。彼はいわば部外者だ。河内のお陰で助かりはしたが、この
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