外伝「鈍色のキャンパス」
VII.Fuga-Gigue-
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えておきなさい。」
それは…損傷が激しいということ…。解ってはいた…だが…これは紛れもない現実なのだと、そう感じとることが出来た…。
「すみませんでした。」
「いや、気持ちは痛いほど分かるよ。君はこの方の知り合いなんだね?」
「はい…幼馴染みです。彼が…僕を救ってくれたんです。」
「…?それは渡り廊下が崩落した際、君達は一緒にいたということかい?」
「そうです…。」
俺がそう答えた時、不意に突風が吹いて亡骸にかけられたシートが捲れた。そして、そこから彼の…河内の顔が見えた。
それは全体が損傷し、初めは分からなかった。そして、しだいにそれが‘彼'だと認識出来、俺は一瞬顔を背けたくなってしまった。しかし、俺はこれを心に焼き付けなくてはならない…そう感じたのだ。
「河内…有り難う…。」
俺は力を振り絞ってそう言った。その時、俺の目から涙が溢れ、俺はそれを止めることが出来なかった。
「藤崎君…もう良かろう。彼も、君の苦痛に苛まれる姿を見たくはあるまい。」
俺の肩に手を置き、宮下教授がそう言った。
振り返ると、そこには宮下教授だけでなく、他の教授達や小林に鈴木、他のサークル仲間に田邊君も来ていた。皆は心配そうに俺を見ていたが、皆だって気持ちは同じ筈だ…。
そう思って口を開こうとした時、警官が俺に話し掛けてきた。
「藤崎君と言ったかい?落ち着いてからでいいから、状況を詳しく聞かせてほしいんだが。」
「はい。大丈夫です。」
俺は警官にそう答えると、一旦宮下教授へと振り返った。
「教授…」
「無理はするな。」
俺を案じてそう言った宮下教授に、俺は気力を振り絞って言葉を返した。
「心配しないで下さい。僕は警察の方と話してきますので、申し訳ないのですが田邊君をお願いします。」
そう言うや、宮下教授は「分かった。」と一言だけ言ってくれた。
その後、俺は警官と共に少し離れた場所に行き、今日の出来事を話した。
「では、建物自体にトラブルがあった…と言うのかい?」
「そうだと思います。」
「それでは、君達の中に耳鳴りや頭痛があった者がいたのかい?」
「いいえ。僕も仲間にもそれはなかったし、他の学生を見ていましたが、そういう人はいませんでした。」
俺がそう答えると、警官は腕を組みながら眉を潜めた。
「どうも矛盾点が多いな。普通であれば、気圧変化は人体にも強く影響を及ぼすのだがねぇ。さっき君が話した楽器のことを考えれば、当然人体にもかなりの負担がかかった筈だ。それがまるでない…となると、私には理解出来ない。そう言えば…君、これ何だか分かるかい?」
ふと思い出したかのように、警官はとある物を俺に見せた。恐らくは瓦礫の中にあったものだろうコンクリート片だったが、その手のひらサイズの欠片に何かが書いてある…。
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