外伝「鈍色のキャンパス」
VI.Menuett
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こに来てるなんて、誰も想像してなかった…。
「田邊君…なぜそれを最初に言ってくれなかったんだい…?」
俺が溜め息混じりに問うと、田邊君は済まなそうに返してきた。
「申し訳ありません。父の名を出すと、必ず相手の態度が変わるので…あまり言いたくはないんです。勿論、両親を愛してはいますが、親の七光りで何かを得たくはないんです。」
田邊君の態度に、一同は目を丸くした。慌てふためく俺達よりも、この目の前の子供の方が大人に見えたからだ…。
彼がどんな風に育てられたのかは分からない。ただ、この歳で自立心があるのは、親がそう育てたからだろう。単に甘やかすのでなく、かといって厳し過ぎず…これが難しいのだ。
田邊君の両親に面識はなく、無論どんな人物かも噂程度にしか知らない。だが、田邊君の両親は彼を大切に思っているであろうことは伝わる。しかし、ここでそんなことを考えている余裕はないのだ。
「彼の言う通り、一先ず学内から人を出しましょう。何かあってからでは遅いですし…。」
有川教授が椎名教授へそう言うと、椎名教授は少し考えてから口を開いた。
「そうですね…。では、私は理事長の所へ話に行きますから、有川教授は許可が降り次第、学内放送で指示を出して下さい。庄司教授は他の教授達にこのことを伝えて協力を求めて下さい。」
椎名教授がそう告げると、二人の教授は共に「分かりました。」と返し、直ぐ様その場を離れたのだった。
二人が去ってから、椎名教授は俺達へと振り返って言った。
「藤崎君、君は田邊君を連れて直ぐに出なさい。放送が入れば慌ただしくなるから。」
「分かりました。ですが一旦サークルの方へ行き、全員で外へ出るようにします。」
「そうか…では急いでくれ。私はこれから理事長室に行くから。」
そう言うや、椎名教授は足早に立ち去ったため、俺と田邊君はサークルへと向かったら。
暫くしてそこに着くと、そこには七人の仲間が顔を揃えていた。だが、やはりいつもと様子が違っていた。
「京、困ったことになってんだよ…。」
俺が入るや、開口一番にそう言ったのは鈴木だ。その手にしていたのはヴァイオリンだが、その四本の弦は全て切れているようだった。
「分かってるよ。弦は切れて管には罅が入ってるんだろ?」
「…何で分かるんだ?」
鈴木は俺の言葉に首を傾げた。
「ここだけじゃなく、学内中それで騒がしくなってるからな。」
俺はそう鈴木に返すと、今度は皆を見回してから言った。
「皆、建物自体に問題が起きてる可能性もあるって話だから、全員外へ出るよう言われてる。そろそろ学内放送が入るだろうから、早く出る用意をしてくれ。」
そう俺が言うと、皆は互いに顔を見合せ、早々に支度を整えた。
俺達はその場を離れると、直ぐに中央棟に続く渡り廊下へと向かった。そこ
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