第三十話 春季大祭その一
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春季大祭
四月十八日、春季大祭です。今日は学校の授業はなく神殿の中庭に集まってそこでお話を聞きます。とはいっても皆結構好き勝手におしゃべりをはじめています。
「何かこういう日っていつもね」
「おしゃべりばかりよね」
「そうそう」
私もクラスの女の子達と一緒になっておしゃべりに興じています。神殿の本殿からはよろづよ八首や十二下りが弦楽と一緒に聞こえてきます。
「本当はいけないけれど」
「まあそれはね」
当然先生達も一緒ですけれど今日はかなりリラックスされています。
「ところでさ」
「どうしたの?」
ここで話が動きました。北礼拝場の前に置かれたパイプ椅子に座りながら皆で話していますけれど周りは皆天理高校の生徒です。男の子の黒と女の子の紺が白い砂の上で一緒になっています。
「昨日ちっちってさ」
「私?」
「そうよ。男の子連れで寮に帰ってきたじゃない」
「えっ!?」
「ちっちが!?」
一人のその言葉で皆急に色めきだしました。
「何時の間にそんなことを?」
「デートってやつ!?」
「デートじゃないわよ」
私は少しうんざりした顔で驚く皆に対して答えました。
「後輩の子でね」
「後輩の子を誘惑してって・・・・・・」
「年下キラーだったんだ、ちっちって」
「何でそうなるのよ」
また話がおかしな方向に流れてきました。
「私そんなのじゃないから」
「けれど今言ったし」
「それってやっぱり」
「だから。違うのよ」
私は少しムキになって言い返しました。
「それはね」
「違うっていうの?」
「そうよ。あの子はね」
「あの子ってねえ」
「そうその表現で」
皆また私をからかうようにして言ってきます。何か何を言っても、っていう感じになってきて嫌な気持ちにもなってきました。全く、とも思いました。
「余計に怪しいわよ」
「実際付き合ってるんでしょ?」
「付き合ってるって。彼氏とかそういうことを言いたいの?」
「そのものズバリ」
「当たり前じゃない」
本当に言ってきました。
「それ以外に何があるのよ」
「ないでしょ」
「何度も言うけれどね。私は」
本気で怒ってきました。そんなつもりはないですから余計に腹が立ってきます。大体私は阿波野君とは本当に何もないわけですから。
「阿波野君とは何ともないのよ」
「ああ、阿波野君っていうんだ」
「あの子」
皆今度は名前を聞いて納得してきました。
「成程ねえ」
「やっぱり名前まで知ってるの」
「これは当たり前でしょ」
怒った顔になっているのが自分でもわかります。
「同じ大教会所属なんだから」
「奥華の子なのね」
「そうよ」
このことにはすぐに答えることができました。
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