巻ノ四十四 上田への帰参その六
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「そしてこれからこの地で得たものを」
「使うか」
「そうしていきます」
「わかった、ではな」
景勝も幸村のその言葉を聞いて言う。
「これからも進むがいい」
「それがしの武士の道を」
「その話も聞いてる」
今度は傍らに控える兼続を見ての言葉だ。
「よくな」
「では」
「その様にな」
「畏まりました」
こう話してだ、そしてだった。
幸村は景勝の前を退くとすぐにだった、己の屋敷に戻り十勇士達に告げた。
「帰ることになった」
「上田にですな」
「あの地に」
「うむ」
実際にというのだ。
「そうなった」
「では、ですな」
「今よりですな」
「身支度を整え」
「そのうえで」
「上田に戻る」
まさにという返事だった。
「よいな」
「ですか、遂にですな」
「上田に戻りますか」
「長い様で短かったですな」
「ここでの暮らしは」
「そうじゃな、よい暮らしだった」
幸村は微笑んでだった、この春日山での暮らしを思い出してだった。そのうえで十勇士達に対して述べた。
「ここでのことは一生じゃ」
「忘れられませぬな」
「何があろうとも」
「我等にとってよき糧となりました」
「ですから」
「まことにな、だからここで手に入れたものをな」
その頭と身体にである。
「全て持って行ってな」
「そして、ですね」
「上田に戻り」
「そのうえで」
「糧としていこうぞ」
こう行ってだった、彼は早速だった。
十勇士達と共に故郷に帰る支度をはじめた、そしてその支度が出来た時にだった。幸村はまた景勝に呼ばれた。
そのうえでだ、こう景勝に告げられた。
「明日じゃ」
「はい、明日にですな」
「戻るがいい」
「わかりました」
「送るがいい」
景勝は今も傍らにいる景勝に告げた。
「境までな」
「畏まりました」
「また会おう」
景勝は幸村にあらためて告げた。
「そして再び会う時はな」
「その時はですな」
「お互い今よりも大きくなっていようぞ」
「人として」
「そうなろうぞ」
「それがしこれからも精進していきまする」
幸村は景勝のその言葉に確かな声で頷いて応えた。
「上杉殿にもお約束します」
「その約束通りにな」
「次にお会いした時は」
「わしも約束する」
景勝もと言うのだった。
「互いにな」
「大きくですな」
「なろうぞ」
「さすれば」
こう互いに話してだった、そのうえで。
幸村は景勝の前を辞した後だ、兼続に伴われてだった。
まずは幸村主従が春日山で暮らしていた屋敷に向かった、その途中にだった。
後ろに控えて共に進む十勇士達を見てだ、こう言ったのだった。
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