巻ノ四十四 上田への帰参その三
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「そちらも励まれれば」
「いいですな」
「是非共」
「お願い申す、そしてその政は」
「民の為のもの」
「そうでなければです」
決して、というのだ。
「なりませぬな」
「ですな」
「近頃当家にも」
最後に言ったのは酒井だった。
「不埒者がいますが」
「まさか」
「はい、あの親子に」
これ以上にないまでにその顔に嫌悪を浮かび上がらせてだった、酒井は信之に話した。それは他の四天王達も同じだった。
「都から来た坊主です」
「崇伝殿ですな」
「あの者達はです」
本多正信と正純の親子、それに以心崇伝はというのだ。
「全く以て腐った者達です」
「それがしはあの方々とお話したことは」
「特にありませぬなな」
「ですからどうした方々かはです」
知らぬというのだ。
「だからどうかとは言えませぬが」
「お会いすれば必ずです」
「嫌なお気持ちになられます」
榊原と井伊も言って来た。
そしてだ、本多は特にこう言ったのだった。
「腹わたまで腐った者達です」
「左様ですか」
「あの親子は一門ではなく」
その本多一族ですらないというのだ。
「あの坊主は坊主ではなく」
「では、ですか」
「曲学阿世、企むばかりの外道です」
「それが崇伝殿ですか」
「あの様な者達にはお近付きになられますな」
決してという言葉だった。
「よろしいですな」
「それは」
「ただしです」
ここで酒井はさらに言った。
「天海殿につきましては」
「あの東国から来られた方はですか」
「どうも言えませぬな」
「かなりの学識がおありとか」
「そのお人柄はです」
どうもというのだ。
「わからぬものがあります」
「企みとは」
「縁がない様です」
「そうなのですか」
「至って穏やかで」
「掴みどころのない」
「そうした方ですか」
信之もこのことを聞いて言う。
「あの方は」
「何か我等ではわからぬ」
「そうしたものをお持ちの」
「深い方の様です」
「それが天海殿ですか」
「はい、あの親子や坊主と違います」
このことは確かに言うのだった。
「そのことはご安心下さい」
「わかりました」
「我が家は民のことを考え」
「そのことも非常に強いですな」
「殿への忠義と共に」
「即ち仁義と忠義ですな」
信之はこの二つの義を出した。
「それの強い家ですな」
「そして信義もなのです」
「しかしその信義は」
また言った井伊だった。
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