第一物語・前半-未来会議編-
第八章 夜中の告白者《2》
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その言葉に、今度は即座に言葉を返した。
『死ぬんだぞ』
「そうだな」
『消えるんだぞ』
「知っている」
『何もかも無くなるんだぞ』
「全てが無くなった方が――」
奏鳴のその言葉は続かなかった。日来の長が訴えかけるように、叫び、怒鳴った。
『良いとか、楽でもねえ! 死ぬこと認めんなよ。何やったか知らねえけど、死ぬなんておかしいだろ』
呼びかけるように、セーランは宇天学勢院の戦闘艦に向けて話す。
『だったら日来に未来を告げに来たのは、最後の役目だったからかよ!』
『その通りだ。何もせず、突然死ぬのは酷だと思ってな』
『お前に聞いてんじゃねえよ。なあ辰ノ大花の隊長さんよお』
呼ばれた。
だから映画面|《モニター》の方へと体を向けた。
『仲間なんだろ、だったら守ってやるのが当然だろ。なんで守ってやらねえんだよ!』
「守ろうとしたわ……」
怒りの意志を、小声で言った。
日来の長がいう言葉にも怒りを感じる。
しかし、
解った気にならないで!!
怒りを感じているのは彼だけではない。
実之芽は怒りを越し、憎しみへと感情が揺れ動きそうな程に心が怒りに燃えていた。。
何もしなかったわけではない、守らなかったわけでもない。
しかし救えなかった。
全力を尽くしてなお全力を尽くせ、こう彼は言っているのと同じだ。
胸に抑えられない憤怒の言葉を吐いた。
「ただ流され続けていた日来の長が、解ったような口を聞かないで!!」
彼女の声に、仲間や日来の者達は震えた。
周囲に気を配っていたときとは違う、今の彼女は眼前に映る者に殺意に似た感情を抱いている。
口で言うことは簡単だ。甘い考え、淡い期待、愚かな希望。そんなことに感情を動かされ、結局は無理だと気づく。
そう、私達みたいにね。
実之芽は奏鳴の前に立つ。
彼女を隠すようも、守るようにも見える。
「何も解ってない。なら貴方は守ったことがあるの? 死ぬことを定められ、それを覆せない現実を前にしても絶望せず、必ず救ってみせるとその者に言い、救ったことが!」
大きく息を吸い、
「――答えてみなさい!!」
荒く息を付き、映画面に指を差す。
腕を伸ばし、彼の心臓を貫くように。
今までのバカらしかった雰囲気とはがらりと変わり、混沌に似た夜の中、怒りが支配する場となった。
『……俺は、』
言葉が続かない。
言葉に出そうとするが、喉の中でその言葉が止まる。
うなだれているような、声が映画面からかすかに漏れる。
『俺は!』
力を込めたが、先程と同じだ。
日来の長は何かを払うように、左腕後ろに振った。
音は聞こえない。
空気を切っただけで、何も起こらない。
そして沈黙した。
地を見るように首を下に
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