第一物語・前半-未来会議編-
第八章 夜中の告白者《2》
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なんて、面倒な存在が割って入ってきたわね。
実之芽は、額に粘るような汗をかいていることに気づく。
今言葉を交わした相手は、自分達辰ノ大花にとって敵と言える存在だ。しかし味方でもある。
だからこそ、下手に動くことは出来ない。
暴動と認めれば、それに対し動かなかった辰ノ大花は行動力のない者達の集まりと解釈されてしまう。だから、ここはそれを否定する。
セーランは宇天学勢院の戦闘艦から、声を聞いていた。
そして空に表示される自分のとは違う、もう一つの映画面を指差す。
「なんか知らんけど、人の告白邪魔すんな」
『邪魔? それはこちらの台詞だな』
強く、鋭い声だ。
その声が、冷たく日来に響き渡る。
『日来は今、世界中の最高危険地域として見られている。その日来が奥州四圏の辰ノ大花に訳の分からぬことをしているのならば、神州瑞穂及び奥州四圏の中心である黄森は黙っているわけにはいかないのだよ』
「黄森の誰かは知らねえけど、訳の分かんねえことじゃねえぞ。これは告白と言ってな、人類が崩壊世界という大昔であっても好きになった人へと愛の言葉を贈る神聖な行いなんだぞ!」
『その神聖な行いを利用し、辰ノ大花の意志を揺さぶって味方につけるつもりか?』
「なんでそうなんだよ」
セーランは、足で今立っているコンテナを力強く踏みつける。
金属が打撃をされている音が鳴る。
いいか、とセーランは通信中と表示されている映画面に向けて言う、
「俺はただ宇天覇王会の長が好きなだけだ、それを政治に絡めて失敗に終わらせる気だな?」
『たとえ告白が成功したとしても、結局は失敗に終わる。何故なら――』
何故ならば、
『宇天覇王会の長、委伊達・奏鳴はこの世から消えるのだから』
言葉を聞いた。
この世から消える、つまり死ぬということだ。
セーランは面食らい、そして焦った。
「な、なに言ってんだよ、じょ、じじょ、冗談だろ?」
『嘘だと思うなら聞いてみることね。家族を殺し、私達の仲間を虐殺したその殺人者にね』
●
実之芽は日来学勢院の長が、こちらを見ているのに気づく。
それを感じたのだろう、彼女に横にいる奏鳴は何の意味があるのか、息を吐いた。
『なあ、嘘だろ? 殺したとしてもなんか理由があったんだろ?』
「何も言うことはない。さっき聞いた通りだ、私はただの人殺しだ」
『――――』
日来の長は何も言わなかった。
ショックでなのか、思っていた通りだからか、それは今の彼の表情では解らなかった。
実之芽は奏鳴に視線を向けた。
震えていた。小さく、近くにいないと分からないだろう。
顔を下げていた奏鳴は、何かを吹っ切るように上を向いた。
「だからもうほっといてくれ。私が好きならば、私が死ぬことを黙って見てろ」
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