第四話 誘惑と驚愕 その六
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「うあああ! 何だこれは!」
「こんな料理、実家でも食べたことがないわ!」
「うまい、うまい!」
貴族ということを忘れ、料理に夢中になった。
ルイズは、その反応をみて少々怖くなったが、次第に空腹と興味心に負け、料理を口にする。
そこから先を、ルイズは覚えていない。
昼食を終え、皆が呆然と、恍惚とした表情で食堂を後にする中、ルイズはアーチャーも食事をとっていないことを思い出した。
「あいつ、どこ行ったのかしら…?」
「あいつ、というのは君の使い魔の事かね? それならば、今君の真後ろにいるがね?」
「……へ?」
思わぬところからの返答に、ルイズは間抜けな声を漏らした。
頭から降って来た声をたどり、恐る恐る視線を上げる。
すると、椅子の上から、覗き込むように、褐色と白髪が覗いていた。
「うひゃあ!」
「っと」
突然のアーチャーの登場に驚き、椅子ごとひっくり返りそうになり、わたわたともがくルイズだが、すかさずアーチャーが倒れないように椅子を元の位置へと押し返した。
「大丈夫かね?」
「え、ええ……じゃなくてっ!」
驚きで心臓がばくばくと脈打っている音を聞きながら、ルイズは椅子から立ち上がり、アーチャーに詰め寄った。
「あんた、今までどこにいたのよ?」
「授業に出るな、と主人に仰せつかったのでね。洗濯物を干して、成り行きで厨房の手伝いをしていた」
「待って、洗濯物はまだ理解できるけど、どうしたら成り行きで厨房の手伝いになるの?明らかに過程がすっとんでるわよね?」
「そうだな、話せば長くなるが……」
「具体的には?」
「そう、あれは料理見習い三人が、村を発つところから……」
「あんたの話が厨房の昔話にすり替わってるんだけど!?」
「ふむ、それは不思議な話だな……」
「不思議なのはあんたの頭の中よ!」
ぜえ、はあ、と息を切らすルイズ。涼しい顔のアーチャー。
この図からは考え付かないだろうが、アーチャーは彼女の使い魔である。
と、息を整えたルイズはそこでとあることを思い至る。
「もしかして、だけど……今日のお昼って、あんたが作ったの……?」
「それは正確ではないな。これだけの量を単独で作るのは困難であり、事実、これらの殆どは厨房のコック達が調理したものだ。……まあ、多少私も手を加えたりもしたがね?」
つまり、今回のこの騒動は、アーチャーのせいであるらしい。
今まで授業中に悶々としていたことを、ルイズは一時脳の隅に追いやり、
「あんた、いったい何者なのよ……」
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