第四話 誘惑と驚愕 その五
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ルーンの性質に触れ、その後ルイズのクラスメイトにあらぬ疑惑を掛けられたアーチャー。
彼が本当に女性用下着に欲情するような真症の変態であれば、弁解の余地はないのだが、生前も死後も、そういった趣味は持ち合わせていなかったので、些か不本意である。
が、元はと言えば周囲を警戒を怠った、自身の身から出た錆である。本日二度目のうっかりである。
(……実はこのうっかりもこのルーンのせいではあるまいな?)
と、ルーンを逆恨みする。だが、流石に不運を付与するならともかく、遠坂家秘伝の呪い「うっかり」をルーンに仕込むのは、高度に無駄というか究極的に無意味である。
まあ、幸いあの二人とは今後積極的に関わる予定はなく、過ぎてしまったことであるし、致し方ないか。と、アーチャーは無理矢理自分を納得させた。
そうして、水洗いの終わった洗濯物を手馴れた様子で物干しにかけていく。
赤い外套を羽織り、傭兵然とした男が慣れた手つきで洗濯物を捌いていく様は、傍から見れば中々にシュールにである。
「よし、こんなこところか」
そして瞬く間に全てを干し終えたアーチャーは、納得のいく出来栄えだったのか、一つ頷くと空になった籠を抱え、踵を返し部屋に戻ろうと足を踏み出した。
すると、返したその先に、今朝うっかりをやらかして少しばかり強引な説得に及んだメイド(たしか、シエスタと言った)がこちらに進んで来ていた。
その姿は自身の身長を大きく超えるほどに積み上げられた洗濯物で隠されていたが、アーチャーは人よりも少しばかり特別製な目で、時折洗濯物と洗濯物の間から覗く黒い髪を見つけ、今朝のメイドであると判断した。
流石にそれは横着が過ぎるのではないか?とアーチャーは助言したくなったが、先程いらぬ世話で主人から説教を食らったばかりであったため、自重することにした。
したのだが……
「んしょ……んしょ…っとと、あ、とと」
ふらふら、ゆらゆら、と足取りと洗濯物が揺れること揺れること。
それでも、それなりに場数を踏んでいるのか、右に、左に、絶妙なバランス感覚で洗濯物の塔を倒壊させずに、こちらまでたどり着いた。
アーチャーはさっさと立ち去るつもりだったのだが、その危なげな運送がどうにも見ていられず、立ち去る機会を逃してしまっていた。
それがいけなかったのか、そもそもシエスタが横着をしたのがいけなかったのか。
まあ、どちらも悪かったとしか言いようがない。
「んしょ……あ…」
「ん?」
ふと、目が合う。
すると、少女は歩み止め、アーチャーと視線を交換する。暫くそうしていると、今朝のアレを思い出してしまったのか、徐々に顔が朱に染まってゆき、口が小さく開閉する。
「……あ、ああ
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