第四話 誘惑と驚愕 その四
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戒すべき全ての符《ルールブレイカー》。
さきの聖杯戦争でキャスターとして召喚されたギリシャの魔女が所持していた、剣型の宝具である。
その形状はおおよそ類を観ないほど奇怪で、つるまきばねの出来損ないです、と言われれば納得してしまうような複雑屈折剣である。しまいには切れ味は普通のナイフと同程度であるが、その形状から果物を切るには少しばかり性格が悪い。
さて、ここまでかのルーン魔術とは反対にデメリットばかりを列挙していったが、世の中デメリットのみの事象や道具などはそうそう存在せず、したとしてもそれは、通常よりも大きな意味を持つことが多い。
デメリットばかりのこの宝具。やはりそのデメリットを推してもおいしいメリットがある。それは、
(あらゆる魔術を初期化する、か……改めて考えなくとも、とんでもない宝具だ)
自身の固有結界のことは棚上にあげるどころか、棚の奥に増設した隠しスペースに押し込んだアーチャーは、破戒すべき全ての符の効果を加味し、自身の左手甲に刻まれたルーン魔術にそれが通用するかを推理する。
(この世界の魔法が、魔術とは全く違う体系から成り立っているのは理解した。……がしかし、自身の魔術がきちんと動作するのも確認したのだ。であれば、令呪などという規格外の代物を断ったのならば、こちらの系統外の契約を破棄するぐらいどうということはないはずだ)
契約を破棄、という部分に反応したのか、ルーン魔術がここぞとばかりに攻撃を仕掛けてくる。
頭痛に顔を顰め、自然と手が額を掴む。
(……ッ! 修復開始……! ……っと、これは中々面倒な。先の案を実行するにしても、精神修復と同時並行で行わねばならないか)
先の案、と要点を誤魔化すと、ルーンは反応せずに大人しく静観しているようだった。
つまりは、直接的な表現を用いなければ、強力な精神汚染は行われないようだ。
だが、常時こちらの精神を見張られているのは中々によろしくない。はっきり言って、不愉快だった。
と、そんな時、
「もーダーリンったら、そんなに女性ものの下着が恋しいんだったら、私のをプレゼントするのに……?」
自身の内部に集中していたせいか、外部への警戒がまたも途切れてしまっていた。
不覚、とアーチャーは死してなお自身の未熟を恥じ、声の主へ向き直った。
「……何か用かね? ミス……キュルケ?」
「そういえば、ちゃんとした自己紹介はまだでしたわね、ミスタ?」
そこにいたのは、今朝ルイズと言い合いをしていた赤毛のメイジと、教室の隅で授業中にも関わらず読書をしていた青い頭髪特徴的な眼鏡の少女だった。
そして、赤毛のメイジ、確かルイズはキュルケと呼んでいたそれは、
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