第四話 誘惑と驚愕 その四
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そのタバサが、途中から読書の手が完全に止まっていた。
途中、つまりは丁度アーチャーの発言のあたりから。
(普段この子が関心を示すのは、本か強力な魔法についての事だけ……そのタバサが……これは本格的に、ひょっとしてひょっとするかも……!)
乙女、というか下世話なレベルの邪推をするキュルケ。
そんな事を知るはずもないタバサだが、ふとそんなピンク色の思考に反応したかのように、その足が急に止まった。
妄想と現実の狭間を行き来していたキュルケは、その急停止に反応しきれず、タバサにぶつかる。
「いたっ! ちょっとタバサ、急に止まったら危ないでしょう!?」
「……あそこ」
完全に自分に非があるにもかかわらず逆切れしていたキュルケは、タバサが指さした方向を向くと、そこには窓があり、ガラスを隔てた向こう側に中庭の様子が見て取れた。
「なによ……って、あれってもしかして、アーチャー?」
そこには、水場でせっせと洗い物をこなすアーチャーの姿があった。
広いようで狭いんだなーこの学院は、と完全に場違いな感想を抱くキュルケだったが、まあ、何はともあれ見つかったのだから結果オーライ。
(でも、あのタバサが興味を示すなんて、一体どんな言葉が飛び出すやら……)
目標を見つけたタバサは、迷うことなく窓を開け、窓枠に足をかけて外に出た。
勿論、マナー違反である。
幸い授業中なのでそれを見咎められることはないだろうと自分に免罪符をかざした後に、キュルケも便乗して窓から外へ出る。
近づき、声を掛けようとしたその時、キュルケは思考が停止した。
「へ?」
そこには、アーチャーがいた。
それは間違いない。だが、そこには変態もいた。
主人の下着を顔に押し当て、苦悶の表情を浮かべるアーチャー。変態だった。変態はしかして、アーチャーであった。
今までメリットのみが観測されていた、左手甲のルーン魔術。
しかし、世の中メリットだけのうまい話などあるはずもなく、まさに魔法級とばかりの恩恵に見合った代償が用意されていた。
それが、精神浸食。いや、精神汚染と言い換えても差し支えはないだろう。
力の底上げと言語の補助。その代わりに契約を交わした主に絶対服従とはいかずとも、主に好意的な印象を抱かせる。また、思考を改ざんではなく誘導し、冷静な思考を吹き飛ばして行動に移してしまう。
そう、少し前の自分のように。
(……恩恵ばかりで、害がなかったこと疑わなかったわけではないが、流石にこれは看過しかねるな……)
そう判決を下したアーチャーは、とある宝具の設計図を脳内に広げる。
|破
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