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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十三話 謀略戦(その1)
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をイゼルローン回廊に運べるようにしてください」

「?」
「副司令長官、運ぶとはどうやってでしょう?」
皆呆然としている。シャフトの疑問は当然だ、要塞を運ぶ? どうやって?

「ガイエスブルク要塞にワープと通常航行用のエンジンを取り付けイゼルローン回廊に運ぶのです」
「!」
穏やかに微笑みながらエーリッヒが答える。

エンジンを取り付ける? 正気か、エーリッヒ。俺はギュンターと顔を見合わせた。彼も混乱している。俺も似たような表情だろう。
「不可能ではないはずです。違いますか、シャフト技術大将?」
エーリッヒはあくまで優しくシャフトに問いかける。

「それは、確かにできない事ではありません。いくつかのエンジンを取り付ければ可能ですが、本気ですか?」
「本気です、設計図を作ってください。とりあえず二十日以内にどのように作るかの方向性を示した資料を作ってください」

「二十日以内ですか、それは少し……」
「完成していなくても構いません。ある程度方向性が見えればそれでいいのです」
「……分りました」

シャフトは盛んに額の汗をぬぐっている。次期宇宙艦隊司令長官の依頼ともなれば無碍に断る事は出来ないだろう。しかしガイエスブルク要塞をイゼルローンに運ぶか、そうなれば帝国領への侵攻は不可能だな。反乱軍も悪い男を相手にした……。

「シャフト技術大将、大将はフェザーンと親しいそうですね」
「な、何を言われるのです」
シャフトは激しく狼狽した。ギュンターの視線が厳しくなるのが分る。このためか、彼を呼んだのは。

「隠さなくてもいいでしょう。別に咎めているわけではないのですから」
「?」
咎めているわけではない? その言葉にシャフトもギュンターも思わずエーリッヒの顔を見詰める。

エーリッヒは優しげな表情のままだ。
「これからもフェザーンとは親しくして欲しいのです。但し大将個人の利益のためではなく、帝国の利益のために」

なるほど、シャフトをスパイとして使おうというわけか。シャフトも自分の役割が分ったのだろう、顔が青ざめている。
「副司令長官、私は決してフェザーンと……」

抗議するシャフトをエーリッヒは手を上げて止めた。
「シャフト技術大将、此処にいるキスリング大佐に調べさせてもいいのですよ」
「……」

黙り込んだシャフトにエーリッヒが優しく微笑みながら追い討ちをかけた。
「協力していただけますね、大将」
「はい」

「先ず、今回のガイエスブルク要塞の件をフェザーンに教えてください」
「要塞の件ですか?」

「ええ、帝国がイゼルローン回廊を塞ごうとしていると。おそらくフェザーンは帝国がフェザーンに攻め込むための準備ではないかと疑うはずです。それに対しては、国内が内乱の危機にある現
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