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本気で挑むダンジョン攻略記
Chapter T:to the beginning
第04話:そして始まりへ
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しかない。
 それにこれは意趣返しだ。ミアとシルのポカンとした表情が見れただけでも溜飲が下がるというものである。
 ラインハルトがちゃんとお金はあるとちらつかせると、ミアは獰猛な笑みを浮かべた。

「ははっ、これは作り甲斐があるねえ!シル、リュー、アーニャ!こっちのテーブルにつきな!」
「「「はい(にゃ)!」」」
「ミア殿、酒も頼むぞ」
「あいよ!!」

 そこからは最早戦場だった。ミアが作ってシル達がそれを運びラインハルト達が食べる。最早それは湯水のように使われる銃弾と、それを死に物狂いで補給する補給部隊の様相をしていた。途中でリザとルサルカ、エレオノーレ、シュライバーがリタイアし、ベイとラインハルトのみになるがそこからがまた長い。まるで競うかのように酒を飲み、飯を喰らう。
 だがそれも仕方がないというもの。そもそもミアの作る飯が旨いのだ。庶民の料理の筈なのに味が良い。間違いなく一流である。
 更にはベイとラインハルトのどちらが先にリタイアするかで周りが賭けを始め酒場全体が謎の盛り上がりを見せ、最終的に50万ヴァリス分の料理が全て片付くという前人未到の偉業が達成されてしまった。最終的には引き分けに賭けていたウエイトレスの少女、クロエの一人勝ちである。

「ふむ。大変美味であった。」
「ははっ、こんなに食べたのはあんたらが初めてさ!そんだけ美味そうに食ってくれりゃあこっちも嬉しいよ!」
また来るぞ(We'll be back)
「ああ、次はもっと食材を準備しとくよ!」

 互いに握手を交わすラインハルト(食べた側)ミア(作った側)。彼らの間には確かにこの瞬間、互いを褒め称えるスポーツマンシップが存在した。

「よくやった!」
「今度は100万に挑戦しろよー!」

 そして場外で観戦していた客たちも二人を拍手をもって讃える。そして再び自分たちの席に戻り、先程の名勝負を肴に酒を煽り始めるのだった。

「もう疲れました〜」
「...」
「グロッキーにゃ...」

 一方、ラインハルト達につかされ、50万ヴァリス分の料理を延々と運び続けたウエイトレス3人(被害者たち)は漸く一段落した激務から解放され力尽きていた。エルフの女性も平気そうな表情の中に僅かながら疲れが見てとれた。

「シルよ。実に美味な料理の数々であったぞ。」
「そ、それは私も誘った甲斐がありましたね。私のお給金もアップすること間違いなしです」
「そうか、また来るのでな。期待しておくと良い。」

『豊饒の女主人』を後にするラインハルト達を、流石のシルも苦笑いで見送るしか無かった。

 この日を以て、たった1日で黒円卓は『豊饒の女主人』のお得意様認定を受けた。この記録が他の客に抜かれることは以降一度も無かったという。

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