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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝 漆黒の修羅(終)
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止まらない。

『―――分かった、ならば卿の殺意で見事、道を切り開いて見せよ。』
「承知ッ!!」

 瑞鶴の全身に鋼鉄の血管を電気が駆け巡り、跳躍ユニットが回転数を上げうたたねから目覚める。




 “――――キス、して―――”

 彼女の最期の願い、それはとても素朴なものだった。
 守れなかった女の末期の願い―――それを拒む理由なんてなかった。
 鉄の味がする別離の口づけ……それを終えた彼女は心底幸福そうに微笑んだ。胸のレスキューパッチを押す。薬液が溢れ強化装備の被膜が柔らかくなる。

 ………これで防弾仕様である強化装備でも銃弾が貫通する。

 “―――嬉しいな、まるで物語のお姫様みたい。すごく、幸せだったよ。ああ……もう、消えちゃってもいいかな――ありがとう”

 俺は引き金を引いた……乾いた銃声が耳に残る。彼女は微笑んだままだった。

 ずっと一緒にいるのだと思っていた。
 振り回し続けてしまったと罪悪感を持っていた。
 俺を理解し、救おうとしてくれた彼女がいるだけで俺がどれだけ救われていたのか。

 ――彼女に贖罪と報恩がしたかった。しなければならなかった。
 だけど、それはもう何もできない。永遠に叶わない。
 一人勝手に満足して逝ってしまった。俺は気の利いた言葉一つかけてやれなかったのに。

 まだ、温かった彼女はもう何もしゃべってはくれない。
 ああ……俺はこの感触を忘れることは出来ない。このすべてが黒く塗りつぶされるような感覚を俺は一生を超えても忘れることは出来ないだろう。

 だが、何故だろう………既知感、遠い遠いどこかで同じ感覚を覚えたような気がする。


『おい!柾なんでアイツを殺したんだ!!連れていけば助かったかもしれないだろ!!!』

 通信機から怒声が飛んでくる。喧しい、貴様に何が分かる。

『あいつはお前の女じゃなかったのか!!』

 だからだよ、あいつの最期が俺以外の要因であってたまるか。BETAに殺された、なんて不純物を俺たちの間には入れたくなかったんだ。
 どうせ、死ぬのなら最期は俺の手で―――ああ、そうだった。あいつを殺したのは俺なんだ。

 アイツの最期まで、あんな塵屑共に奪われて堪るか。

『おい!なんとか―――――』
(さえず)るな、お前から殺すぞ……!!」

『―――――!!』

 隠しても隠し切れぬ憤激、それを滲ませた声に含まれた超ド級の殺意―――それも相手を個と認識しての殺意ではない。羽虫を払う程度の関心での殺意だ。
 それを感じ取ったのか息をのみ、言葉を詰まらせた。


「己とアイツの関係を貴様如きの物差しで測るな。」

 これ以上告げる言葉なし、と最後に言い捨てた。

『……偉そう
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