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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝 漆黒の修羅(終)
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『――――ッ!!』

 兵装担架(ガンマウント)が稼働、両脇からゼロ距離で120mm砲が作り上げた穴に36mmチェーンマシンガンから劣化ウランの弾丸が連射された。
 吹き上がる返り血と肉片を浴びる黒鉄の巨人は即座に死骸となり果てた要撃級の顔面を蹴り虚空を跳ぶ。

 それを見上げ、山吹の瑞鶴を駆る彼は呟いた。


『――――間に合ったか。』
 自らの女の死に目に――――





「ゆい……!返事をしろッ!!ゆい!!」

 通信機に向け声を枯らさんばかりに吐き出す。しかし、その応答はない。
 トンネルから僚機に牽引された瑞鶴はひどい有様だ。
 コックピットブロックに致命的損傷ひしゃげてまるで紙細工を押しつぶしたようだ。
 跳躍ユニットは切り離したのか存在しない。左腕の肩部ブロックもないし、右腕もひじから先が欠損している。

 そんな大破した黒い瑞鶴へと、強化外骨格を纏い跳ぶ。

「くそっ!」

 徒に時間だけが過ぎてゆく焦燥感に毒づき、強化外骨格のアームで瑞鶴のコックピットハッチをこじ開ける。

「―――っ!」

 もわん、と鼻孔を貫いた鉄の匂い。

「ゆい!!」

 それに最悪の結末を半ば確信しながら強化外骨格をその場にパージし、管制ブロック内へと飛び込む。

「あ……あぁ……」
「……やっぱり、来ちゃったんだね。やだなぁ、君に見せる最期が、こんな格好なんて。」

 力なく呟く微笑む。その顔は土色で血の気がなく、隈が浮かんでいる―――死相だ。

「お前は、何時だってきれいだ。」
「はは……嘘が、ほんと下手だね………でも、うん。嬉しい」

 ゆいへと近づく、そしてその力ない手を握る。ゆいの半身はひしゃげた管制ユニットに押しつぶされている。
 辛うじて息はまだあるが、機器をどかせば途端に大出血―――こんな場所で手術をできる設備も人員も時間もない。

 機体ごと基地まで運べばどうにかなるかもしれないが、BETAの大群を掻い潜って行くのはほぼ不可能―――何よりそれまでゆいが持たない。
 ――――詰んだ、何をどうやっても救えない。守れない。


「……ねぇ、お願いがあるんだ。」
「―――なんだ。」

 出来ないと知っていた――――
 俺ではこいつを幸せにしてやれないと知っていた。だから守ると決めた、だから戦うと決めた。
 師から教わった技術、徒労に費やした修練。

 それらを駆使して、こいつが幸せになれる過程の一石にでもなれれば意味があるんじゃないか。
 そう思っていたのに―――なのに、なのに


 俺は守れなかった。


「最期は貴方の手で終わらして―――。」
「……お前は存外に、残酷な事を言うんだな。」

「ごめんね。」

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