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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝 漆黒の修羅(終)
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 だが、尚のこと此処で死なすわけにはいかない。

『――――許せ。』

 大隊長権限で発動が可能な後催眠暗示、そのワードを発動させよいうとキーボードへと手を伸ばす。


 ………その時だった。


『―――ピーっ…ザー、ザーザッザッ……ちょう・・…大隊長ッ!!!』

 通信機からの砂嵐、そしてその中から浮き上がってくる馴染のある声。
 トンネル内に突入した部隊の一人の声だった。

『おぉ……待ちくたびれたぞッ!状況は!?』
『トンネル内にゲートが……国連軍は残存が一中隊。それと……伊上少尉がっ!』


『なに……』

 回復するデータリンク、部隊員の乗機状態が閲覧可能となる。その中に伊上ゆいの機体はあった――――しかし、コクピット部に大きなダメージを受けている。
 衛士も深い傷を負っている。

 ――――出血が酷すぎる、これでは帰還まで持たないだろう。しかし、ここで処置を行うような余裕はない。

『た、隊長――――要塞級があんなに!!』

 トンネルの入り口を陣取っている部下の緊迫した声。データリンクが不完全であるため、感知が遅れた。
 山吹の瑞鶴が視線を巡らすと大挙として押し寄せる要塞級が10体以上―――

『くそっ!腹から光線級を吐かれる前に倒せッ!!』

 続けざまに副隊長から迎撃の指示が飛ぶ―――その時だった。
 要塞級の存在を示す光点が続けざまに2つ3つと消えた。

『友軍機っ!?』
『―――あの瑞鶴は!』

 一目で分かる、ほかの機体と違い現地改修が施された瑞鶴。その挙動、もはや異次元の領域だ。
 そして、普段毛嫌いしている人間のほうが多いというのに、みな不思議と絶望を感じなくなっていく。

『おおおおおお――――ッ!!』

 裂帛の気勢を乗せた斬撃、跳躍ユニットを噴射させ突撃する瑞鶴の肩に担がれるように構えられた長刀が振り下ろれる
 要塞級の右舷と胴体の付け根へと叩き付けられる斬撃、片足とを切り離された要塞級が傾き始める。

 その一瞬―――切断された右舷を蹴飛ばして漆黒の機体が跳ぶ。
 撓りながら繰り出される要塞級の衝角の鞭。

『ふんっ!!』

 空中で身を捻る瑞鶴―――そして散る火花。
 要塞級の鞭が機体を貫通……することはなく、空中で瑞鶴のつま先に蹴り飛ばされていた。

 カウンター、120mm砲が要塞級の頭蓋にさく裂し、その甲殻を割る。

『――――未だだッ!!』

 跳躍ユニットのロケットモーターが点火、すさまじい加速と共に、長刀を構える。
 次いで、がぁあああんと甲高い音が響く。
 要塞級の脳天に長刀が突き立てられていた。それはさながら登山家が山肌に打ち込むピック、瑞鶴の機体が要塞級の顔面に張り付いていた。
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