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101番目の舶ィ語
第十六話。二人の魔女
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実に負けてしまうんですよっ!」

理亜の口調が強まる。それを聞いていた音央は痛そうに目を細めたかのような表情を浮かべる。

「嫌なんです。私、兄さんがいなくなるのは嫌なんです! 兄さんには幸せになってもらいたいんです! 例え、ここにいるのが別の人格が乗り移った兄さんでも、それでも……いいからっ、だから、私の前からいなくならないでください。兄さん……!」

それは、必死な理亜の心からの叫びだった。

「……理亜は確かに、自分からその物語の『主人公』になったみたいだね。自分から、その苦しい道を許諾したんだと思う」

「……はい……」

「だけど、だからといって、ずっと苦しみ続けないといけないなんてことはないんだ! 『主人公』をやってるからって、ずーっと悩み続けないといけないなんてことはないはずだ!
『普通の幸せ』を掴み取る為に、嫌なら戦わなくてもいいはずだ!」

「勝手なこと言わないでよね! アンタにマスターの気持ちなんて解らないわよ!」

「ああ、全く解らないさ! 人の気持ちなんて、特に女性の本心なんて解っていいもんじゃないんだ! 解らないからこそ、考えて、想像して、気を使って、優しくして、時に叱りあったり、銃口を向けあったり、刃物をぶつけあったりしながら。お互いの気持ちを近付けていくのが人間だからな!
っていうか、女性の気持ちが全て解ったら、俺はこんな苦労してないつーの??」

ヒステリアモードが切れかかってきた俺は、ついついスナオちゃんの売り言葉に、買い言葉ってしまった。いかん、自制しなくては。
だが、今の言葉に対しては俺は謝る気はない。もう、謝らない覚悟も出来ている。

「俺が逆の立場だったら、確かに理亜やかなめのように戦わせないっていう手段をとっていたと思う。戦いを止めさせる為に、自分の物語にして。危ないことはさせないようにしたはずだ。おっかない、ラスボスに挑む前に、格好つけて、『絡指(ラクシ)』なんかして、『行ってきます』『行ってらっしゃい』なんかしてたと思う。だけどな!」

俺は人差し指を理亜に向けて叫ぶ。

「実際にそれをされてみたら、いかに嫌なことか解ったからな俺は。だからそうされた俺じゃなきゃ言えない言葉で、お前らに提案するぜ、理亜、かなめ!」

俺は最初から……遠回りをすることになったが、この言葉を伝える為にここに来たんだ。

「俺の物語になって、一緒に戦おう、理亜、かなめ??」

本当は、理亜やかなめを戦わせたくない。コイツらが傷つく姿なんか見たくない。苦しむ姿を見たくない。泣き顔を見たくない。もしかしたら……いなくなるかもしれない。
そんな恐怖に耐えられる自信なんかねえ!
でも、だからこそ。だからこそ……俺はコイツらに側にいてほしいのだ。一緒に戦ってほしいんだ
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