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歌集「春雪花」
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 想えども

  君の姿の

   遠ければ

 眺むは侘しき

    夜半の月かな



 どんなに想いを募らせようと、ここに彼の姿はない…。

 彼は遠く…ここではないどこかへいるのだ。
 私など必要もなく…彼は違う場を選んで生きているのだ…。

 眺めれば明るい月が照らしている…。
 辺りは静かに…ただ蛙の鳴き声と風の音…。

 あの月のように…私に彼は遠過ぎて、もう触れることもないだろう…。



 片割れの

  月ぞ虚しき

    わが恋の

 行く末までは

   遠く照らせじ



 窓を見れば月明かり…空を仰ぎ見れば半月が昇っていた。

 それは時に虚しく私の心を沈ませる…。

 私の恋なぞ結末は解りきっていることなのに…この先どうなってしまうのか知りたくなるのだ…。

 それがたとえ…世を憂うことになるとしても…。

 だが…このようなか弱い月影では、先は見えまい…。

 あの山並みでさえも映し出せぬ光では、もっと遠い未来なぞ照らせようもないのだから…。





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