第1章終節 離別のポストリュード 2024/04
10話 深淵と日向の狭間
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。………私の命は、スレイド君が汚れてでも掴み取ってくれたものだから………だから、絶対に貴方だけを悪者にしたくないの。もう決めたから………どんなに嫌がっても、私の好きにさせてもらうんだから」
荒唐無稽、グリセルダさんの意思はその一言に尽きた。
殺人鬼の罪の一端を引き受けるなど、正気の沙汰ではない。奪った命の重さは、その者の善悪などに拘わらず須らく重いものだ。
たった一つでさえ、心は拉げて歪み果てる。数寄者の妄言で済むような甘いものでは決してない。
「………はっきり言って、御節介の領分を越えている。そんなもの、これから間違ってでも請け負うなよ」
「でも、私は………!」
「その代わり、了承してもらいたいことがある。グリセルダさんにしか頼めないことだ」
………だから、抱えさせるわけにはいかないと思った。
罪はあくまでも当事者のものだ。それを横から掠め取るなどあってはならない。
しかし、《御節介な親友》だからこそ果たしてほしい役目がある。
グリセルダさんの抱擁から抜け出して、同じ視線の高さに居直して言葉を繋げる。
「もし俺がこのスキルの使い方を誤ったら、誰かを救おうとする以外でプレイヤーに向けるようなことがあったら、全力で叱りつけてくれ。どんな手を使ってでも、誰に頼ってでも構わない。とにかく、俺を止めてくれ」
数秒間、グリセルダさんは呆然と俺を見ていた。
でもそれは、発言が理解できないという訳ではなく、思いも寄らない言葉への驚きのようだった。
そして、当然のように笑みを浮かべたグリセルダさんは一つ頷いて見せる。
「任せなさい。でも、そういうお小言については私は手加減しませんからね」
「ああ、だからこそ安心して任せられる。………頼むぞ」
「ふふっ、望むところよ」
得意気に微笑んでみせるグリセルダさんを見つつ、ようやく心が楽になったような実感が現れ出した。
グリセルダさんと和解できたからか、それとも《秘蝕剣》との折り合いが付いたからか、これまでになかった温度を帯びた感情を確かに確認できたように思えた。この温かさがあれば、まだ頑張れる。今は、この温度を絶やさないように努めよう。
………戻ったら、少しだけヒヨリ達と話す時間を増やそうかな。
そんなささやかな目標を立てるや否や、グリセルダさんが勢いよく立ち上がった。何事かと勘繰るよりも先に、グリセルダさんは俺に右手を差し出していた。
「スレイド君、まだ《婚約指輪》って持っているかしら?」
あまりにも唐突に切り出されて脳内で情報を検索するのに時間を要したものの、思い至ったそれを急ぎ用意する。
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