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Three Roses
第二話 幼きよき日々その三

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「それなら私やマリーに何かあれば」
「その時はですね」
「お願いするわ」
「私の幸運を」
「そう、頂戴ね」
「お二人がお願いするよりも」
 その前にというのだ。
「私はです」
「幸運をくれるのね」
「そうさせて頂きます」
「ではね」
「はい、その時は」
 セーラは微笑みマリアに応えた。
「そうさせて頂きます」
「では」
「その様に、では」
「ええ、ただ玉座に近ければ」
 即ち王位継承権を持っていればというのだ。
「災いが来ることもあるのね」
「そうね」
 マリーがここで言った。
「言われてみればね」
「王位を巡る争いは我が国にもあったわね」
「ええ、百年程前は特にね」
「あの時は酷い内戦になったそうね」
「そうらしいわ、国を二つに割った」
 よくある話である、どの国でも。玉座を巡ってそのうえで王位継承権を持つ者、家同士が争う。そして多くの血が流れることが。
「宮廷でも陰惨な陰謀があったそうよ」
「暗殺等が」
「処刑もね、だからね」
「私達も」
「何時何が起こるかわからない」
 マリーはここで遠い目になって言った。
「それがね」
「世の中ね」
「これはお父様のお言葉だったわ」
 マリーはマリアに話した、セーラも。
「今は平穏でもね」
「これからはなのね」
「そう、何が怒るかわからないから」
 それで、というのだ。
「私達も気をつけていましょう」
「そうなのね、確かに今は」
 何処か警戒する顔になってだ、マリアはマリーに話した。
「国も宮廷も平和だけれど」
「お父様と叔父様がおられるから」
「そこから先は」
「ええ、わからないわ」
「どうなるかは」
「未来がわかるのは」
 それはというと。
「神様だけね」
「そうね、神様はご存知だけれど」
「そこから先はね」
「わからないわね」
「だからね」
 それ故にというのだ。
「私達は注意していましょう」
「そうすべきね」
「そして」
 マリーはここでだ、セーラに顔を向けてだった。そして言ったのだった。
「私達に幸運があらんことを」
「はい」 
 セーラはマリーに応えて微笑んで言った。
「私の幸運もまた」
「私達に」
「もたらされんことを」
 祈る様にだ、セーラは二人に言うのだった。三人は薔薇の園の前で幸せに過ごしていた。
 しかしその三人を上から見下ろす者がいた、神経質そうな痩せた顔に膝の高さまで伸ばした黒い髪に鋭利な黒い瞳である。背は歳の割にかなり高い。
 着ているのは喪服を思わせる黒いドレスだ、カラーだけが白い。
 その服を着た少女がだ、書を開いて机に座ったまま三人を塔の窓から見下ろして言った。
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