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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十二話 フリードリヒ四世
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はしなかった。彼自身も容易い事でないとわかっている。大人気ない発言だったと思っているのかもしれない。
それまで黙っていたフリードリヒ四世が不思議そうな表情で問いかけてきた。
「ヴァレンシュタイン、イゼルローン回廊の封鎖とはなんの事だ? 艦隊を回廊の入り口に貼り付けるのか? 」
「いえ、違います。イゼルローン回廊に帝国の拠点となる要塞を設置します」
「馬鹿な、敵の眼前で要塞の建設など出来るはずが無い、不可能だ」
シュタインホフが反対する。その通りだ造る事は出来ない。
「造るのでは有りません。既に出来上がっている要塞を持っていくのです」
「?」
皆不思議そうな顔をしている。無理も無い、俺だって半分キチガイ沙汰だと思っている。
「ガイエスブルク要塞をイゼルローン回廊に運びます」
「卿、何を言っている。運ぶとはどういうことだ?」
「エーレンベルク元帥、ガイエスブルク要塞にワープと通常航行用のエンジンを取り付けイゼルローン回廊に運ぶのです」
「卿、正気か?」
シュタインホフ、失礼な男だな。尤も皆声に出さないだけだろう。妙な目で俺を見ている。原作ではちゃんと出来たぞ。
「正気です。ワープ航法は既に確立された技術です。いささか物が大きいですからワープ・エンジンを要塞に複数取り付ける必要が有るでしょうが可能だと思います。まあ最終的には科学技術総監部に確認する必要は有るでしょう」
「イゼルローン回廊をガイエスブルク要塞で塞ぐか……。それが上手くいけば帝国は外敵に怯えずに済む、名案かもしれん」
リヒテンラーデ侯が喜色を浮かべて話す。エーレンベルク、シュタインホフも半信半疑ながら頷く。
「小官は反対です」
「なんじゃと? 卿自身がいったのじゃぞ」
リヒテンラーデ侯が眼を剥いている。怒っているのか? しかし賛成は出来ない。
「通常なら小官も反対はしません。しかし帝国の現状を考えると賛成できないのです」
「どういうことだ、ヴァレンシュタイン?」
エーレンベルク元帥が眉を寄せ訝しげに問いかけてくる。
「陛下の御前でこのようなことを言うのは心苦しいのですが、帝国は内乱の危機にあります」
「控えよ! ヴァレンシュタイン」
「良い、続けよ」
リヒテンラーデ侯が俺を叱責したが、フリードリヒ四世が侯を抑えた。
「はっ。今現状でイゼルローン回廊を塞いだとします。反乱軍は直ぐにはガイエスブルク要塞の攻略には出ないでしょう。先ずは戦力の回復を図るはずです」
「うむ」
皆頷いている。そう、此処が問題だ、同盟の戦力が回復する……。そして帝国には危機が存在したままだ。
「彼らは考えるでしょう。帝国はイゼルローン回廊を反乱軍に自由に使わせる意思は無い、しかし何とか帝国領へ侵攻できないかと。そして最終
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