背徳と罪人
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シリルside
どこまでも広がっているような森。その中を俺たち三人を乗せた鹿は走り抜けていく。
「お?あれがそうか?」
先頭に跨がり鹿の進路を操作している緋色の髪をした鎧の女性が前方を見ながらそう言う。彼女の後ろからチラッと顔を覗かせ前を見ると、そこには以前色々とお世話になったクロフォードさんのお家が見えていた。
「そう・・・です・・・うぷっ」
肯定した後、酔いを押さえるために顔を伏せる。途中で休めたおかげで大分いいが、やっぱり気持ち悪い・・・鹿さんは仲間のはずなのに、なんで酔っちゃうのかな?
疑問を感じながら家の前まで着くのを待つ。目的地に到着すると、エルザさんが握っていた角を引っ張り乗ってきた鹿の動きを止める。それと同時に、俺の乗り物酔いも収まった。
「ふぅ・・・やっと着いた」
一つ深呼吸して体の中に酸素を送る。動いてる間はてんでダメだけど、止まると治る乗り物酔い。これどういう原理なのかな?非常に気になる。
「大丈夫?シリル」
「はい。ギリギリでしたけど」
後ろから落ちないように抱き締めていたミラさんの声にそう答える。実は彼女の柔らかいものがデコボコ道で揺れており、それが背中に当たっていたからより酔いがひどくなったような気もしたけど、言わないでおこう。悪いのは俺だし。
「鍛練が足らん証拠だぞ。ナツのそんなとこまで真似するな」
乗ってきた鹿を撫でてお世話しているエルザさんにそう言われ、シュンッと落ち込む。けど、すぐにある疑問が頭に浮かび、その気持ちが消し飛んだ。
「ところで、エルザさんはこっちに来てよかったんですか?」
「??何がだ?」
俺が何を言いたいのかわからず不思議そうな顔をするエルザさん。俺の言葉を聞いて、ミラさんも同じことを考えていたらしく、俺の代わりに質問してくれる。
「たぶんジェラールも標的になってるわ。だから、こっちじゃなくて、ジェラールの方に行かなくてよかったのかって聞いてるのよ」
ミラさんの代弁にうなずく。それを聞いたエルザさんは、鹿を撫でながら答える。
「ジェラールの居場所は、私にもわからん。それにあいつは私がいなくても自衛できるし、いざとなればカミューニだっているしな。心配要らないさ」
元聖十大魔道が二人もいる。それなら確かに、心配する必要はないか。
「それよりも、元議長を必ずお守りするんだ」
「任せてください!!」
「そうね。ここが魔法界の大きな砦になるわ」
そう言って鹿さんを木に結びつけた俺たちは、元議長クロフォードさんが住む家へと向かった。
「引退後はハーブの栽培を始めてね。うちで育てたカモミールじゃ」
急な来客に
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