暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第143話 太陽を纏いし女
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いため息をひとつ。冬の外出から帰って来て、疲れ、冷え切った身体にこの一杯。熱い訳でもなく、さりとて温い訳でもない。
 矢張り、お茶にはリラックスさせる効果や、気分を爽快にさせる効果などがある。そう感じさせるに相応しいお茶であった事は間違いない。
 但し……。

「そんな事を聞いている訳じゃないわよ」

 胸の前で腕を組み、少し睨むように俺を見つめるハルヒ。不機嫌……と言うよりも、呆れているのかも知れないが。
 ただ、普通ならば威圧感を与えるとか、自分を守る為にこう言う仕草をする物だと思うのですが、コイツの場合にはどうも、スタイル的に言って防御と言うよりは攻撃に重点を置いた体勢のような気がして仕方がない。

「タートルネックの紅のニットに、普段着感が溢れるデニムのジーンズ。髪は何時ものカチューシャで纏めずに自然に流した形。パンツスタイルを披露するのは初めてか」

 その格好で学校に行けば、オマエさんと気付かずに近寄って来る男子生徒も出て来るぞ。
 見た目が良い奴は何事にも有利になるようになっている、そう言う事か。少し肩を竦めて見せながらそう締め括る俺。
 但し、彼女の胸の前で光る銀の十字架に関して今は無視。似合って居ない訳ではないが、何となくだが今、それを口にするタイミングではないような気がする。

「そんな事も聞いていないわよ。そのメガネの理由は分かったから、次はそのあからさまに怪しい両腕の包帯の理由を聞いているのよ」

 勘違いしないでよね。別にあんたの事を心配している訳じゃないんだからね、……などと言う頭の悪い、ある意味お約束な台詞を口にする事もなく、直球の問いを口にするハルヒ。
 ……と言うか、その程度の事は分かっている。単に少し外して答えているだけ。

 なんや、そんな事かいな。そんな事はどうでも良い事。そういう雰囲気を醸し出しながら、

「まぁ、ちょいと下手を打って怪我をした。その程度。パッと見は大事(おおごと)に見えるけど、明日には包帯も取れるし、メガネも必要なくなる……と言う話や」

 ……と答え、両肘をテーブルの上に立ててハルヒに見せる俺。学生服の袖に隠されているが、二の腕から先はすべて包帯によって包まれている。
 そう、原因不明の失明に関しても、大気との摩擦によって燃えて仕舞った両腕に関しても、流石に簡単に回復出来る状態などではなく、少なくとも今日中は、包帯とメガネを取らないで過ごして欲しいと有希に言い含められて、この部屋に帰って来た。
 ……のですが、どうにも、その辺りに多少の違和感が。

 腕の再生は今回が二度目。もしかすると、前回もそれなりに時間が掛かったのかも知れませんが、そもそも前回、右腕の再生を行った時はこの世界に流されて来た直後。この時は、俺自身の意識が睡眠と覚醒が交互
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