第6章 流されて異界
第143話 太陽を纏いし女
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る俺。俺の価値観から言わせて貰うのなら、家がどうのだとか、家系がどうのなどと言う事は犬にでも喰わせて仕舞え、……と考えて居るのですが、それは俺……すべての親類縁者を失った独りぼっちの俺の考え。
自分の寿命や未来をすべて家や家系、家門の為に費やす人間が居たとしても不思議ではないし、それを俺が否定したとしても意味はない。
ただ……。
「弓月さんに何か困った事があったら呼んでくれ。絶対に、……とは約束出来ないけど、出来るだけの事はするから」
結局、俺に出来るのはこの口約束だけ。今の俺ではハルヒと交わした約束も。有希と交わした約束も守る事が出来るのか微妙な状況ですから。
先ずハルケギニアに帰り、あの世界の混乱した状況を終息させる。何もかもそれから後の話だ。
俺の言葉を聞いた弓月さんから小さな陽の気が発せられた。これはおそらく微笑ったのだと思うが……。
ただ、今までのやり取りの何処に――
「それなら私の事よりも、今は貴方自身の事を一番に考えて下さい」
今の武神さんの姿は、とても私の事を心配出来るような状態ではありませんよ。
優しく、諭すようにそう言った後に、身体を少し脇に移動する弓月さん。その彼女の後ろから感じるよく知っている少女の気配。
……戦闘中は直ぐに回復用の術を行使してくれた彼女が、このタイミングでは有希にその役割を譲ったと言う事か。
確かに、今の俺の身体の状態――。特に見た目は最悪でしょう。視力は回復せず、ずっと瞳を閉じた状態が続いている。両腕は木目がしっかりと浮き出た、何故自由に指や、その他の関節が動くのか謎すぎる木製の腕。
更に、身体の各部分には火傷の痕や、大小、様々な傷が無数に存在して居り、その一部からは今も少しずつの出血が続いている。
……もっとも、これは飛霊を最大限に出現させた上に、旅館の方には剪紙鬼兵も残して来た事に因る返しの風。特にアラハバキを送り返す為の最後の戦いは、流石にある程度の安全を考慮したとは言え、俺の飛霊も無傷で切り抜ける事は出来なかった為に、普段よりも多くの傷を身体に受ける結果となって仕舞ったのですが。
「すまんな、有希」
オマエのトコロに帰る、……と言う約束やったのに、逆に迎えに来させるような結果となって終って。
見えない目で彼女を真っ直ぐに見つめ、一連の流れのまま自然にそう話し掛ける俺。ただ、流された結果とは言え、必ず五体満足な状態で帰る、などと口走らなくて良かったと考えながら。
驚天動地……と表現すべき、なのでしょうか。すっと身を引くように弓月さんが身体を脇へと移動させた瞬間、戸惑いにも似た気配を発する有希。
しかし、それも一瞬。俺の言葉に小さく首肯いた後、前に進むこと数歩。
未だ立ち上がる事さ
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