第6章 流されて異界
第143話 太陽を纏いし女
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し、これではいくらなんでも挙動不審すぎる。確かに、深く考えもせずに話し掛けたのは事実。更に、これからの話の内容は、彼女の立ち位置やその他を無視して、自分だけの価値観を押し付けるかのような内容になるのは確実。
それに、縦しんば上手く説明出来たとして、俺に出来る方法がくちづけか、それとも、妙に漢臭い方法しか知らないので……。
思考は巡る。もしも、瞳が見えていたとすれば、この瞬間の俺は弓月さんを見つめる事も出来ず、視線は明らかに虚空を彷徨っていた事でしょう。
しかし……。
「問題ありませんよ」
弓月や高坂の家がどう考えて居ようと、武神さんは、武神さんの思うままに生きて下さい。
彼女の答えに小さく重なる退魔の鈴。これはおそらく、首を横に振った際に発せられた音。
「私の事などお気になさらずに」
優しい声。更に言うと、俺の態度が少し滑稽に見えたのか、その声の中には小さくない笑いの気配が存在した。
但し……。
但し、その内容は強い拒絶。少なくとも、取りつく島のない、と言う表現が相応しい態度だと思う。まして、彼女の発して居る声も、今宵、この場所にやって来る前に聞いた声……俺に対して、少し甘えや依存の混じった声などではなく、西宮で普段に聞いていた時の声であった事も間違いない。
「せやけど、それでは弓月さんに――」
――残された寿命は長くはない。
そう言い掛けて、しかし、言葉の後半部分は無理に呑み込む俺。確かに、俺の持って居る知識内での蟲使いの寿命は短い。しかし、その知識が絶対に正しい訳でもない。
俺の知らない特殊な方法で、蟲に与える霊力=生命力を補う方法が有るかも知れない。もしかすると、彼女に蟲に対して耐性のような物があるのかも知れない。もしくは、弓月さんの家系に潜む何モノかの血の作用が働いている可能性もある。
そもそも、俺だって式神使い。俺が同時に現界させて置ける式神の数も、普通に考えるのならば常軌を逸していると言えるレベル。これを、大したリスクを冒す必要もなく熟せている俺が、弓月さんの状態を一方的に生命の危険があるレベルだと糾弾する訳には行かない。
などと考え……自分を無理矢理に納得させようとして、しかし、矢張り何も出来ない事も知っている自分に歯噛みする。それは全部、気付かない振りをして呑み込むには余りにも苦い事実だから。
今の俺には何も出来ない。いや、出来る事はある。ハルヒとの約束を反故にして、アイツが望んでも何もせず、ハルケギニアに帰る事もしなければ。
少なくとも、弓月さんのこれから先の未来すべてを受け止める覚悟があるのなら、出来る事はある。
……確かに、あるのだが……。
「――そうか」
短く、まるでため息を吐き出すかのように、短くそう口にす
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