第八話 取引相手は極悪商人と赤毛の猫
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業を一旦中断すると、その場で正座して深々と頭を下げて厳かに告げるのだった。
「……いつか必ず返しますから、立て替えでお願いします……」
あれから一週間。
とりあえずはネリイ一家が旅行から帰ってくるまでに修理は終わり、ネリイに大目玉を喰らう事だけは避けられたものの、ライドには更なる借金が残った。
とはいえ、当初考えていた程ではなく、その結果が現在の店内の状況なのだが。
ライドはミリーが丸くなっている布団は取り敢えずそのままにして立ち上がると、外に繋がる扉を開ける。
そもそも寝室等というものも存在しない狭い小屋なのだから扉も一つしかないのだが。
外に出ると早朝の僅かな冷気が今の季節が夏だということを一瞬忘れさせてくれる。
太陽は出ていたが真横から差し込む陽光が今の時刻が早朝だという事を教えてくれていた。
そんな早朝のネリイの庭先で、一人の男が布を地面に広げてその布の上に丁寧に魔石を並べていた。
「やあ。相変わらず早いね」
ライドは男──ケリーに近づきながら軽い様子で声をかけると、後ろから並べられた商品を眺める。
その一つ一つは高価なものは存在しなかったが、人々がよく使用する種類の魔石が取り揃えられていた。
「お前は相変わらず遅いな。同じ接客業として、その心構えはどうかと思う」
「いや、それは夜中に勝手に僕の布団に潜り込んでくる君の妹に言ってもらいたいね」
「あいつは商人ではない。強いて言えば動物だ。動物に人間の常識など期待せんよ」
「相変わらず口の悪い奴だなぁ……」
商品を並べ終わって地面に座り込んだケリーに並ぶように、ライドも腰を落とす。
二人並んで露天を開いているような形になったが、ケリーは特に何も言わなかった。
ただ、商品が並んでいる端の方に置かれた紙片を左手の人差し指で軽く二回ほど叩いただけだ。
「口の悪いのはお互い様だ。頭に血が上った時にほざいた暴言の数々。俺は決して忘れんぞ」
ケリーが叩いている紙片には『こちらの商品を使用した魔道具は、同敷地内の店舗にて販売中』と書かれていたが、これは別にライドが頼んだ訳でもなければ、ケリーの善意という訳でもなく。
「人間の本質なんてそんなもん何だから忘れてよ。誰だって隠したい事の一つ二つはあるし、演じていきたい理想の自分もあるんだよ」
それはあの時バシリッサやケリーにライドが言いたかったこと。
あの時は言葉として発する事は出来なかったが、二人には伝わったと思っている。
「ふん。それで借金をこさえていては意味がないがな。それよりも約束の方は覚えているだろうな? 未熟者」
ケリーの言葉にライドは笑う。
ケリーの口にする約束こそが、今回ライドがそ
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