五十一話:問答
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たフェイトにとってみれば生まれない方が良かったという言葉はこれ以上ない程に心をかき乱すものとなる。
「フン……訂正させるのは構わないが―――まずは彼らを守らないとね?」
煽りに煽って作り出した隙を突き両サイドに並ぶ培養層前に手榴弾をばらまく。ハッとしすぐに手榴弾を抑えに行く二人を見届けることもなく切嗣は固有時制御を用い逃げていく。
「しまった……全部安全装置が付いたままだ」
「あれだけの数を同時に一人で爆発させるなんてできないのは冷静になればわかったはずなのに……すいません、私が敵の挑発に乗せられて至らなかったばかりに」
「いえ、私も冷静さを失っていました。それよりも追わないと―――」
自分達が騙されたことを知り苦々し気に唇を噛む二人の耳に警報が響く。続いて洞窟全体が地震のように揺れ動きだし岩盤が崩れ始める。
「これは…! まさか自爆システム!?」
「これだと追っていっても道に迷った時点で私達も生き埋めに。それに……」
フェイトはチラリと立ち並ぶ培養層を見る。今から逃げれば間違いなく脱出することが出来るだろう。しかし、自分達が逃げられてもここにいる者達は逃げることが出来ずに暗い洞窟の中でその生涯を終えることになるだろう。そんなことは決してさせない。そのためには自分がここに残って自爆システムを解除しなくてはならない。だが、それは衛宮切嗣を追うのを完全に諦めなければならないということだ。
「……嫌な人だ。私が絶対にこの人達を見捨てないのを分かって自爆システムを作動させたんだ」
全ての人達を人質に取りながらその者達を生かす道をしっかりと残していく。悪にも正義にも徹することができない弱さがそこには透けて見えた。その不器用さと計算高さに何とも言えない気持ちになりながらフェイトは自爆システムを止める為に動き始めるのだった。
地上本部の自らの城とも呼べる一室にてレジアスは座り続けていた。今の自分は待ち人を待ち続ける以外にすべきことはない。地上が、空が、海が大騒ぎしているというのにその責務を放り投げただ待ち続けるだけ。待ち続けた結果、遂に―――友が訪れた。
「久しぶりだな、レジアス……見た目はともかく、心は随分と老けたようだな」
「ふん、それはお互いさまだろう―――ゼスト」
旧友の再会に感動的なものはない。どちらも罪の意識があるのか表情は硬い。それでも大切なことはお互いに分かっている。一度死してもう蘇った男とそれを殺してしまった男。二人の交わす言葉は初めから決まっている。
「レジアス、あの日に誓った。俺の、俺達の信じた正義は今―――どうなっている?」
若き日に語り合い希望を託した二人の正義についてだ。
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