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八神家の養父切嗣
五十一話:問答
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して脱出の機会を作り出すべく二人を煽るような言葉を吐きだす。

「そもそもだ、シスターシャッハ。君達は神、聖王なんて“殺人鬼”をどうして信仰しているんだい? 殺人鬼を崇拝しているから血で血を洗う闘争を肯定しているんじゃないのかい?」
「なにを…! 私の目の前で神を侮辱するのですか!?」
「シスター、抑えてください」

 自らの信奉する神を侮辱され思わず頭に血が上るシャッハ。それをフェイトは切嗣の策だと察し抑えようとするが簡単にはいかない。これが彼女自身を馬鹿にするものであれば簡単に流す程度の器量も持っている。だが、シャッハは生来の生真面目な性格もあり熱心な教徒である。

 幼いころから神を信じ、神に仕えることに喜びを感じてきた。言わば彼女を彼女たらしめる根幹に信仰が存在するのだ。それを侮辱されたのだ。人間というものは不思議なもので自分自身よりも自分の大切な者を傷つけられた方が、怒りが湧くことがある。今の彼女の状態はまさにそのようなものであるのだ。

「はっ、いい加減目を覚ましたらどうだい? ゆりかごを見ろ。そして、古代から聖王の血筋の者はあの兵器を操り何をしたかを考えてみろ」
「それは……世界を平定し平和の礎を築いたと伝わっています」

 モニターに今もはやてと地上本部航空隊が必死に戦うゆりかごを映し出しその邪悪なまでに洗練された武装を見せつける。流石のシャッハもその光景に今まで教義として教えられてきたことに疑問を抱かざるを得なかった。尻すぼみになる彼女と反対に切嗣は一気に声を張り上げ押しつぶしにかかる。

「世界に平和にもたらした? ハ、笑わせるな。兵器にできるのは人を殺すことだけだ。あの力で何万、何億の人間を殺して挙句の果てには世界そのものを滅ぼした。それを“正義”だと高らかに謳い上げながらね。僕が今までやってきたことを大きくしただけに過ぎない。それを悪だと言わずに何と言う!!」

 自身の価値観を揺さぶられシャッハは反論の言葉を出すことが出来なかった。そもそも、神が人間を救うことはない。人々の理想によって存在を得た神は、人間の望み通り、人間を悪として扱う。神とは名ばかりの人間への究極の罰である。例え、実在した人物であろうと人の悪性に触れていけば原初の姿は忘れ去られ理想の神となるだけだ。

「神や正義なんて碌なもんじゃない。聖王のクローンのあの子も人を惑わすいてはならない存在だ。争いの種になるぐらいなら生まれない(・・・・・)方がマシだった」
「……今の言葉、訂正してください…ッ!」

 今度はヴィヴィオを、クローンとして生み出された者達を侮辱するようなセリフを吐きフェイトを焚き付ける。自分の子どもを馬鹿にされて怒りを覚えないまともな親はいない。それはフェイトとて例外ではない。おまけに実の親から存在を否定され
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