五十一話:問答
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たような口でほざくなッ!!」
その程度で止まれるのなら最初から人類の救済などという馬鹿げた夢を抱きはしない。恐らく、全ての人間が、犯罪者に至るまでの人間が一度は願ったことがあるはずだ。全ての人間が幸せであるようにと、争いの無い世の中でありますようにと。
だが、その中で誰か一人でも本気で世界の救済を試みた者がいただろうか。大人になってもその心を持ち続けられた人間が何人いるだろうか。結局は口先だけで現実的には無理だと言い訳をして皆諦めていく。全ての者がその願いを抱き続ける、それだけで世界は救われ人間は新たな段階へと昇っていけるということに気づいているというのに。
「誰も救おうとしないから僕が救うんだ! 第一―――」
救おうとする人間がいないからこそ、世界はいつまでたっても悲しみに満ち溢れている。だから切嗣は立ち上がり武器を取った。正義の味方を目指しながら悪にまで身を落とした。しかし、本当の意味で彼が一人で世界が救えないはずがないと考える理由は別のところにあった。
「たった一人の“少女”に世界の滅びを担わせるような腐った世界なら、一人で救えなきゃおかしいだろう!?」
今まで一番の感情が籠った怒声がフェイトとシャッハを叩き付ける。かつて何の罪もないのに死の運命に立たされた少女。小さな肩に世界の消滅などという宿業を負わされた最愛の娘。あの時の世界はまさに少女一人を犠牲にすることで救われるというおとぎ話のような状態であった。
一人で世界を壊せるのなら、一人で世界を救うことも不可能ではない。否、そうでなければ余りにも不公平だ。一人に壊されるほど脆弱なくせに、一人で直せないなど認められない。そうでなければこの手であの子を殺していたとしても世界は簡単に滅ぼされただろう。あの子の死などでは何も救えはしないとあざ笑うように。それが切嗣には許せなかった。
「切嗣さん……はやてのことを……」
「世界なんて一人で壊せるんだ。だから一人で救えない道理はない。もし、それでも救えないというのなら……僕はもう…欠片たりともこの世界を愛せない」
仮に彼が世界は救えないと判断してしまったら、愛は憎しみへと変わり世界を滅ぼす魔王へと姿を変えかねない。かつての彼ならどんなに絶望的な選択を突き付けられても世界を存続させる選択をしていただろう。だが、世界にも己にも本当の意味で絶望した今の彼がどういった行動に出るのかは本人ですらその時になるまでわからないだろう。
(……切嗣、もういいだろう。早く行こう)
(そう……だね。敵が囮に気を引かれているうちに準備を済ませてしまおう)
これ以上は見ていられないと思ったアインスが切嗣を促し、話を切らせる。そのことに気づかぬ切嗣ではないが時間が無いのも事実なので知らぬふりを
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