第一章
[2]次話
油断はさせない
マリー=ボルソワはパリに生まれパリで育って今もパリにいる。まさに生粋のパリ娘だ。
だが彼女は今だ、周りにこう言われていた。
「あんた最近危ういみたいよ」
「何かとね」
「彼氏だけれどね」
「ジルのことだけれどね」
友人達は彼女自身にだ、心配する顔で言って来たのだった。
「何かね」
「最近声かけてる娘多いみたいよ」
「同じ高校の娘達がね」
「何かとね」
「ええ、知ってるわ」
マリーは微笑んでだ、友人達に答えた。
「もうね」
「あら、貴女も知ってるの」
「そうなのね」
「だってジルのことならね」
それこそというのだ。栗色の髪に幾分かカールをさせて伸ばしている。目は奇麗なグレーで肌はシミ一つない。唇は紅ではっきりとした形をしている。顔立ちは顎が細くそれに合わせた感じで気品があり眉の形もいい。
背は一五四程とフランス人にしては小柄だが胸は目立っている。すらりとした脚は可愛いデザインのスカートで覆っている。
その彼女がだ、高いソプラノの声で語るのだった。
「それこそよ」
「何でもっていうの?」
「知ってるって」
「流石に全てとは言わないけれど」
「それでもなのね」
「かなり知ってるっていうのね」
「そのつもりよ。少なくとも彼の身の周りのことはね」
そのこと位はというのだ。
「知ってるわ、だからね」
「女の子が何人も声をかけてることも」
「知ってるのね」
「そうよ、だからね」
それでと言うのだった。
「手は打つわ」
「打つっていうとやっぱり」
「言い寄る女の子をそれこそ一人一人と?」
「しめていく」
「そうするのね」
「まさか。私暴力とは無縁よ」
見れば小柄なだけでなく腕は細い、脚の形はロングスカートの上からもわかる位に見事だが格闘技等をする脚ではない。
「そんなことはしないわ」
「絶対にっていうのね」
「それこそ」
「暴力は振るわない」
「そうなのね」
「そうよ、けれどね」
それでもというのだった。
「それで打てる手はあるのよ」
「じゃあ裏の筋に頼んで」
「それで痛めつけるか脅す」
「それはまた黒いわね」
「だからそういうこともしないわよ」
くすりと余裕の笑みを浮かべてだ、、マリーはそうしたことも否定した。
「だから暴力とは無縁なのよ」
「じゃあどうするのよ」
「女の子本当に言い寄ってるわよ」
「このままじゃ危ういわよ」
「浮気されるかね」
「最悪ね」
それこそというのだ。
「取られるかもよ」
「そうなってもいいの?」
「だからそうしたことはないから」
絶対にと言うマリーだった。
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