第六章
[8]前話
「あれだね」
「見方が違いますね」
「僕も虎はね」
彼自身の虎観もだ、彼は話した。
「後ろから狙う」
「そうした生きものだと思ってますね」
「うん、やっぱりね」
「そうですよ、ですが」
「彼等は違ったね」
「正々堂々と戦う」
「無敵の虎だね」
まさにそれだとだ、ジェームスは言った。
「彼等の虎は」
「その通りですね」
「実際に戦っても強いけれど」
「ちょっと格好よ過ぎですね」
「見方が」
「はい、本当に」
「虎の見方もそれぞれだね」
こうも言ったジェームスだった。
「そのことがわかったよ」
「そうですか、ただ」
「ただ?」
「そうした日本人も野生の虎が出そうな場所には行かないんですよ」
「危険だからだね」
「虎が人も襲うことは有名ですからね」
それこそ世界中にある話だ、インドネシアだけでなく中国でもタイでもインドでも虎がいる地域では何処でもある話だ、そして実際にあったことだ。、
「ですから」
「日本人も近寄らないんだね」
「虎好きでも」
「好きでも危険であることはわかっている」
「そういうことですね」
「そうだね、愛していてもわかっている」
虎のことをというのだ。
「わかるべきとことはね」
「そこは流石といいますか」
「やっぱり日本人は頭がいいのかな」
「理想の虎を見ていても現実の虎はわかっている」
「そういうことになるみたいだね」
「そうかも知れないですね」
こう二人で話してだ、そして。
ラハルはジェームスにだ、今度はこうしたことを言った。
「それで明日は」
「何処に案内してくれるかな」
「湖どうですか?」
ラハルは笑って彼に勧めた。
「明日は」
「湖だね」
「野生の鰐が見られますよ」
こう話すのだった。
「そこで」
「鰐か、今度は」
「行かれますか?」
「そうだね、食べられたくはないけれど」
「近寄らないと大丈夫ですよ」
ラハルは鰐についても笑って話した。
「少し離れたところから見ていれば」
「それじゃあ」
「はい、行かれますか」
「そうさせてもらうよ」
笑顔で応えたジェームスだった、そのうえで。
彼は次の日は湖で野生の鰐を見た、そしてそこでもあの日本人のカップルと会った。そしてこの時は虎ではなく鰐の話を楽しく話したのだった。
突然背中から 完
2015・11・20
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