31部分:稲瀬川勢揃いの場その一
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稲瀬川勢揃いの場その一
第六幕 稲瀬川勢揃いの場
波の音、後ろには満開桜。だが雨が降っておりその音もする。その中で捕り手達の声がする。
大勢「迷子やあい」
捕り手達が左右から現われる。
捕一「どっちに行った?」
捕ニ「こっちだぞ」
捕一「そっちか」
捕三「おうよ」
捕四「逃がすなよ」
そして彼等は右手に消える。すると黒子が出て来て傘を置く。そこには『志ら浪』と書かれている。
やがて場が引き締まり曲がかかる。まずは弁天小僧が現われる。服は染衣装(これは他の者も同じ)、紫地である。刀は腰に一本差しているだけである。これも他の者も同じ。そして模様は白蛇に琵琶、菊之助の菊。傘を取り背を向ける。彼は左手から現われるがこれは他の者も同じである。
続いて忠信が登場。彼は雲龍柄である。龍は緑。彼も背を向ける。これは後の二人も一緒である。
赤星が出て来る。鳳凰柄である。
南郷、彼は雷獣である。ただ他の者が左肩に手拭いをかけているのに対して彼は首に巻いている。これは彼が浜育ちだからである。
四人は背を向けたまま立っている。だがここに日本駄右衛門が登場。碇綱の模様である。
彼も傘を手にし背を向ける。ここでバン、と音がする。五人がそれを受けこちらに顔を向ける。
雷が光る。その中彼等の顔が浮かび上がる。ここで五人の台詞がはじまる。
弁天「雪の下から山越しに、まずはここまで逃げ延びたが」
忠信「行く先つまる春の夜の、鐘も七つか六浦川」
赤星「夜明けぬ中に飛石の、洲崎を離れ船に乗り」
南郷「故郷を後に三浦から三崎の沖を乗り回さば」
日本「丘と違って波の上、人目にかかる気遣いなし」
弁天「しかし六浦の川端まで、乗っきるなわが遠州灘」
忠信「油断のならぬ山風に、おいてか追手の疾風に遭えば」
赤星「艪櫂にあらぬ一腰の、その梶柄の折れるまで」
南郷「腕前見せて切り散らし、かなわぬ時は命綱」
日本「碇を切って五人共、かなわぬ時は命綱」
五人「(大声で)かかろうかい」
ここで捕り手達が再び現われる。その数は十人程。そして最後に左手から青砥藤綱が登場。
青砥「さあ五人共、覚悟はよいか」
日本「青砥様、約束通りここに」
四人「参りましたぞ」
青砥「さすれば殊勝なこと、さあ縄を受けるがいい」
日本「我等も卑怯未練に逃げはせぬ。一人一人名を名乗り、縄を受けてようぞ」
四人「おう」
青砥「よくぞ言った、では名乗るがよい」
五人「おう」
捕り手達は後ろに並んで下がる。青砥はその中央に立つ。そして後ろから彼等を見守る。
青砥「して真っ先に」
一同「進みしは」
これを受けてまず駄右衛門が出て来る。
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