第四章
[8]前話
「師を越えるものだからな」
「それがあるべきなのですね」
「これははじめて言うがな」
美津ノ助にだ。
「御前はそれをした、そして御前が弟子を取ればな」
「その弟子にですね」
「御前を越えさせろ、いいな」
「はい」
確かな声でだ、美津ノ助は坂東に答えた。
「そうしていきます」
「そして舞台だが」
彼のそれはというと。
「もう言うことはない」
「それもですか」
「藤娘以外もな」
それもというのだ。
「もうな」
「ですか」
「後は弟子に伝えろ」
その備えたものをというのだ。
「いいな、そしてな」
「その弟子にですね」
「御前を越えさせろ、いいな」
「そうさせてもらいます」
「ではな」
坂東は確かな微笑みで応えた、そしてだった。
美津ノ助は師の名も受け継いだ、それから弟子を取ってだ。
藤娘を舞わせてだ、こう言った。
「演じるんじゃない、なれ」
「なるんですか」
「そうだ、藤娘そして藤になるんだ」
「そうなることがですか」
「大事だ、演じるな」
師に言われたことをだ、彼も言うのだった。
「いいな、なるんだ」
「どうしたらなれますか?」
「稽古だ、稽古をしていってだ」
そうしてというのだ。
「藤になるんだ、いいな」
「稽古をしてですか」
「なれ、いいな」
こう言うのだった。そうして藤になる者を受け継がせていくのだった。それも彼以上の芸を持った者もまた。
藤娘 完
2015・10・22
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