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青砥縞花紅彩画
30部分:極楽寺山門の場その三
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彼は大紋に立烏帽子、中啓という立派な出で立ち。
日本「むっ、これはまさか」
青砥「左様、それがしが青砥藤綱である。知っていような」
 その後ろには捕り手達が大勢いる。彼が統領であるのは言うまでもない。
青砥「日本駄右衛門よ」
日本「はい」
青砥「弁天小僧は生きておるぞ」
日本「まことでござるか」
青砥「立ち腹を切った時に捕らえしが他の三人により救い出された。傷は浅く逃げて行ったわ」
日本「左様であったか。それはよきかな」
青砥「そして香合は拙者が預かった。千寿姫も助けておる」
日本「何と。生きておったか」
青砥「川に飛び込みしが運良く救い出されたのじゃ。そして信田の家の疑いも晴れた。何れ復権されるであろう」
日本「何ということじゃ。よいことづくめではないか」
青砥「しかしお主をここで見逃すわけにはいかぬ。覚悟はよいか」
日本「いや、それは適いませぬぞ」
青砥「何故じゃ」
日本「この五人男、捕まる時と死ぬ時は同じと誓っております故。申し訳ござらぬがここは退かせて頂きましょう」
青砥「さすればどうするか。この捕り手の中を」
日本「あいや、心配ござらぬ。ほれこの通り」
 舞台が煙に包まれる。そしてそれが消えた時には駄右衛門の姿は消えている。
日本「(声だけ)さすればこれにて御免。また御会いしましょうぞ」
青砥「むっ、何処へ行くか」
日本「稲瀬川におりまする。さすればそこで」
青砥「捕らえてしんぜよう」
日本「では拙者は逃げるまで。よろしいか」
青砥「望むところ。それでは」
日本「また御会いいたそう」
青砥「むむむ」
 駄右衛門の気配が消えていくのを感じている。彼はそれを感じいたしかたなく左手を眺める。
青砥「稲瀬川で五人を捕らえようぞ」
一同「はっ」
 青砥を中心に見得を切る。ここで拍子木、そして幕。

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