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大刀
第一章

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                 大刀
 河南に住む李江は一応は恵まれていると言っていい家に生まれた。代々それこそ五代の梁の頃からの武人の家で将も出していて今も代々武挙に通っている家の嫡男だ。
 大柄で引き締まった顔をしており骨はしっかりしていて腕っ節も強い。だが。
 彼はよくだ、難しい顔で家の者達に言っていた。
「いい武器がない」
「若旦那様に合う」
「そうした武器が」
「そうじゃ、剣はな」 
 まずはこれだった。
「わしには軽い」
「刀もですな」
「どの様なものも」
「木の葉の様で軽過ぎる」
 大柄で力も強い彼にはというのだ。
「腰にはあるがな」
「主に使うには」
「そうだというのですな」
「馬に乗って使うとな」
 余計にというのだった。
「何か随分とじゃ」
「軽く」
「それで、ですか」
「剣や刀はですか」
「今一つですか」
「弓は当然じゃが」
 使うことはというのだ。
「武人としてな」
「若旦那さまは弓もいいですが」
「しっかりと的に当てられます」
「重い弓も平気ですし」
「そちらもですか」
「主な武器ではない」
 李江にとってはというのだ。
「どうもな」
「そちらもですか」
「その武器もですか」
「弓矢も」
「毎日鍛錬はしても」
 それでもというのである。
「やはりわしはな」
「弓もですか」
「主ではありませぬか」
「槍も斧も」
 そうした武器はというと。
「何か違うのじゃ」
「若旦那様の好みではない」
「そう言われますか」
「鞭も」
 銅や鉄から造った棒である、幾つか節になっておりそれで敵を殴り倒す武器である。
「違う、わしは重くそしてどの様な鎧も兜も真っ二つに出来る」
「そうした武器がですか」
「欲しいのですか」
「そう考えておる」
 まさにというのだ。
「そうした武器を使いたいが」
「果たしてそれは何か」
「それが、ですか」
「見付からぬ」
「そう言われますか」
「そうじゃ、それを手にしてな」
 そのうえでともだ、李江は言った。
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