第四章
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太子は王にだ、こう言った。
「これで宜しいでしょうか」
「充分以上だ」
これが王の返事だった、王はすっかり老いて髪も髭も真っ白になっている。
「まさにこれがだ」
「王の後継者としてですね」
「為すべきことだ」
「左様ですか」
「王は血縁によって王となる」
王はこのことは絶対とした。
「しかしだ」
「その血縁はですね」
「薄くともよい、そしてだ」
王はその目を険しくさせてこうも言った。
「我々は違うがな」
「例えですね」
「真実はそうでなくともだ」
「よいのですね」
「そうしたことになっていればな」
それで、というのだ。
「いいのだ」
「そういうことですね」
「そして何よりもだ」
「どの勢力にも寄らずですね」
「国を万全に治められることだ」
このことが第一だというのだ。
「だから余はそなたを太子に選んだのだ」
「まがりなりにも王家の血を引き」
「どの勢力にも寄っていなかった」
他国、門閥貴族、宗派とだ。
「そして有能である」
「だからですね」
「そなたを太子に選んだ、そしてだ」
「私は陛下の期待にですね」
「応えてくれた」
そしてそのうえでというのだ。
「順序よく国政を進めていったな」
「軍を掌握してですね」
「門閥貴族達の勢力を削いでな」
「他国にも有利な条約を結び」
「宗教の問題も解決し」
「平民達も味方につけ内政も充実させました」
「実に見事だった、そして今度だな」
王は太子にさらに言った。
「奴隷制を廃止し彼等を解放してか」
「彼等も味方につけます」
「そこまで為すか」
「彼等も王家の味方とします」
「王家の力は絶対か」
「そうしてみせます」
「見事だ、そなたを太子にして正解だった」
素直にだ、王は喜んだ。
「しかも周りには常に慎重であるしな」
「刺客ですね」
「ことを為していけばな」
「必ずそれに反発する者が出ます」
太子はこのこともわかっていた、それでなのだ。
「身の回りにはです」
「常に気を使っているな」
「毒にも」
「ならいい、では私の後は正式にだ」
「王にですね」
「即位しこの国を治めるのだ」
「わかりました」
太子は王に冷徹な響きの声で応えた。
「それからも」
「この国を頼んだ」
「はい」
実際にだった、太子は王が退位し正式に王になってもだった。
その辣腕で以て国政を動かし国家を栄えさせていた、その彼を見て民達は深い尊敬の念を抱いてだった。
彼にだ、この尊称を贈った。
「尊厳王」
この名を贈ったのだ、そしてだった。
もう彼を王とみなさい者は国に殆どいなくなった、偉大なる王として褒め称えた。王に相応しい者だと。
正統後継者 完
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