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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第三節 群青 第二話 (通算第72話)
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その私兵集団が《ホワイトベース》を模した軍艦を造る――それは世論を意識した、いわば政治的色彩を帯びたものに見えた。エマの感覚からすれば、子供騙しである。正義は地球連邦政府と軍のエリートであるティターンズにあり、ジオニストに踊らされた愚昧な分離主義者たちが、勘違いをしているとしか思えなかった。ましてや〈月の専制君主たち〉がやっていることである。ティターンズが行っている軍需産業の地球企業による寡占政策に対する嫌がらせにしか感じられない。にも関わらず、スペースノイドはエゥーゴへの協力を惜しまず、ティターンズを毛嫌いする。体制への不満程度ならば理解もできるし、政治活動ならばエマとしては云々はない。だが、それがテロリズムへと発展している現状では、武力鎮圧するしかなかった。
 とは言え、任務は任務である。
 溜め息を一つ噛み殺して、通信回線を開いた。チャンネルは連邦軍共通回線だけでよいと思ったが、念のため全周波帯に合わせた。
「こちらG001、〈リトルスワロー〉よりエゥーゴ所属艦へ。着艦を乞う。繰り返す、着艦を乞う」
 無視されればいいと思いながら返信を待った。そうなれば、正当な攻撃の口実になる。だが、船足を落としている敵艦が、無視するとも思えなかった。程なく返信が入った。
「《アーガマ》よりG001へ。白旗を確認。左舷、カタパルトへの着艦を許可する。《アーガマ》のデータは渡せない。オートでの着艦シークエンスは無視せよ」
「G001、了解。着艦は二機だ」
 無愛想に答えながら、着艦シークエンスをマニュアル――といってもセミオートだが――に切り替え、操縦桿を握り直した。エゥーゴのクルーがエマの一挙一挙一動を見ている。ここで失敗する訳にはいかなかった。
「フランクリン大尉、着艦します。先導しますのでシステムを同期させてください」
「了解だ…エマ中尉」
 緊張した声が接触通信を通して聞こえた。無理もない。フランクリン・ビダンは軍事技師であっても軍人でもパイロットでもはないのだ。操縦も、一応できるという程度である。エマとしては、システムを同期させなければ、着艦させる訳にはいかなかった。万が一にも機体と船体は傷付けては、敵に付け込まれる。自分だけでなく、フランクリンにも完璧を求めなければならなかった。
 ミノフスキー粒子が撒布されていても短距離の光通信ならば可能である。コンソールを叩いてアプリケーションを呼び出した。
「行きますっ」
 接触回線を解き、着艦シークエンスに移行したエマ機はゆっくりとMSカタパルトに降りていった。
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