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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十話 飛翔
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す。このうえ主導権まで握られては帝国を守る事は出来ません」
提督の声は落ち着いている。でも主導権? 一体何のことだろう。
「主導権か……。卿の言う事は分る。しかし持ち続ける事が出来るか?」
「持ち続けます。勝つために」
「勝つためか」
しばらく沈黙が続いた。もう一度ノックしようとしたときまた養父の声が聞こえた。
「博打だな。ヴァレンシュタイン」
「はい、負ければ全てを失うでしょう。しかし勝てば全てが変わります」
結局私はドアをノックすることなく戻った。提督は更に一時間ほど養父と話した後帰った。
「ユスティーナ、お前はヴァレンシュタインが好きか?」
提督を見送った後、養父に問われ思わず顔が紅潮するのが分った。なんて答えよう。
「そうか……好きか。苦労するなお前も……」
「?」
苦労する? どういうことだろう? 私の疑問を読み取ったのだろう。養父は言葉を続けた。
「あれには翼が有るのだ。今まではその翼を使おうとはしなかった。もしかすると飛ぶのが怖かったのかもしれん」
「怖かった?」
「そうだ。誰も付いて来れんからな。おそらく孤独だろう。それが分っていたのだろうな、だから飛ばなかった」
分るような気がする。クロプシュトック侯事件の時、私は一瞬提督が怖くて避けた……。あの時の提督の驚いた顔が今でも眼に浮かぶ。
「飛ぼうとしているのですか、提督は」
「そうだ、自らの翼で飛ぼうとしている。この国を守るにはあの男が羽ばたくしかないのだ。ローエングラム伯が敗れた今となっては」
「……」
「お前があの男の孤独を癒してやれるのなら良い。しかしその自信が無いのなら、あの男の事は諦めろ。それがお前のためだ、そしてあの男のためでもある」
養父はそれだけを言うと、私から離れていった。私は養父の背中を見詰めながら何度も自分に問いかけた。私に提督の孤独を癒せるだろうかと……。
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