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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十話 飛翔
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事に意味がある。その言葉はそこから出ている。
ロマンチシズムでも、戦争馬鹿でもない。ただ自分を試したい、それだけなのだ。欲でも野心でもない、だから始末が悪い。時々釘を刺さなければならないだろう。だが、先ずは彼らにはやって貰うことがある……。
■ 帝国暦487年5月 3日 オーディン ゼーアドラー(海鷲) ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ
ここはあまり居心地が良くない。女性客は私一人だ。何といっても高級士官専用ラウンジなのだから。しかし、ヴァレンシュタイン大将に頼まれては仕方ない。大将の言葉によれば、今夜このゼーアドラー(海鷲)において宇宙艦隊の艦隊司令官達が“フェザーン討つべし” と気勢を上げるのだと言う。
周囲の反応を確認するのが私の役目だ。そんなわけで私は今、リューネブルク中将と一緒にゼーアドラー(海鷲)にいる。さすがに一人では居づらい。今も私たちに周囲の視線が集まっているのが分る。
小面憎いのはリューネブルク中将だ。平然としてウォッカライムを呷っている。周囲の視線など気にならないようだ。私も負けじとジンフィズを呷る。周りからはどう見えるだろう。いけない、少しペースが速いかもしれない。
早速、ビッテンフェルト中将が大声でフェザーンを非難し始めた。“拝金主義者、金の亡者、帝国の血をすする蛆虫” 酷い言葉だが的外れでは無い。誰でも少なからず思うことだ。
ワーレン提督、ルッツ提督が加勢した。今回の戦いで三百万の戦死者が出たのはフェザーンのせいだと言い始めている。この分だと“フェザーン討つべし”の声が上がるのも間も無くだろう。
違和感を感じないのは、おそらく私も今回のフェザーンのやり口に不満を持っている所為だろう。それくらい今回の戦いは酷かった。戦死者が三百万なんて聞いたことが無い。
ヴァレンシュタイン大将はイゼルローン要塞陥落、遠征軍壊滅の報告に少しも動じなかった。救援軍から連絡が有ったのだが、むしろ報告してきた方が、おどおどしていたくらいだ。
周囲には決裁を取りに来た女性下士官も何人か居たのだが、大将の冷静さに感動して泣き出す女の子まで居たほどだ。“副司令長官が居れば大丈夫、帝国は負けない”そんな声が女性下士官の間で上がりつつある。
「中将、これって司令長官の責任を軽くするためなんでしょうか?」
私は小声で中将に問いかけた。周りには聞かれるのは拙い。自然体を寄せる形になる。
「単純に考えればな。しかし副司令長官は単純な人ではない、違うか?」
リューネブルク中将は、グラスを揺らしながら答える。中将の言うとおり、大将は単純な人ではない。
「本気でフェザーンに攻め込むというのは?」
「同盟も戦力が枯渇気味だ。ここでフェザーンに援軍を出すほどの余力があるかどうか、可
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