第10話
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「”正義”の形骸化………」
「それは………どういう意味でしょう?」
「”正義”は、ともすれば”奇麗事”と同じ意味と捉えられる場合も多いだろう。在り方も人それぞれ………だから正義などは存在しないと嘯く者もいるかもしれない。だが、どんな形であれ………結局のところ、人は正義を求めてしまう生き物なのだよ。」
「え……」
「人が正義を求める生き物………?」
ディーター総裁の話を聞いたロイドとティオは呆けた。するとディーター総裁はロイド達に振り向いて答えた。
「なぜなら”正義”というものは人が社会を信頼する”根拠”だからだ。もし、犯罪が起こった時にそれを法によって裁くという”正義”が存在しなければ………多くの者は家に閉じこもり、滅多に街に出る事はないだろう。そうなったら社会生活はまともに成り立たなくなってしまう。だが――――このクロスベルでは”正義”の形が曖昧でも何とか成り立ってしまっている。」
「!!」
「……それは………」
「政治の腐敗や、マフィアの問題………それを警察が取り締まらなくても経済的に恵まれているから多くの市民は生活に困らない。結果的に、単純犯罪は少ないが目に見えない悪が蔓延っていく………だが、そんな中でもやはり人は”正義”というものをどこかに求めざるを得ない。どんな形であれ、社会を信頼できる安心感を欲してしまうからだ。―――だからクロスベルではここまで遊撃士の人気が高いのだよ。」
「あ………」
「『民間人の安全を最優先で守る』………確かに”正義の味方”って感じですよね。」
「なるほどねぇ………他の国に比べて、妙に遊撃士が持ち上げられるとは思ったが。」
「………とても納得がいきます。」
「――――遊撃士協会規約第2項。”民間人に対する保護義務”……『遊撃士は、民間人の生命・権利が不当に脅かされようとしていた場合、これを保護する義務と責任を持つ。』―――この規約は言い換えれば、遊撃士は民間人に危険が迫れば例え相手が権力者だろうと軍人だろうと守ってあげなければならないという意味よ。警察・警備隊の上層部に加えてクロスベルの政治家の多くが腐敗してしまっている以上クロスベルの人達が権力に囚われない遊撃士を持ち上げるのも当然の事ね。」
ディーター総裁の説明を聞いたロイド達はそれぞれ納得した様子で頷いている中レンは静かな表情でディーター総裁の説明を補足した。
「だが、知っての通り、遊撃士協会が行使できる正義はあくまで限定的なものだ。この街の歪みを根本的に解決することは不可能だろう。だからこそ私は―――君達に期待したいのだよ。」
「えっ………!?」
「遊撃士の代わりに悪を倒せってことッスか?」
「はは、そんな単純な
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